最新記事

平昌冬季五輪

「平和の祭典」平昌五輪に兵士亡命と軍事演習が落とす影

2017年12月14日(木)16時40分
ヒュンミン・マイケル・カン

韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相(左)出席のもとで聖火リレーも始まったが Kim Hong Ji-REUTERS

<北朝鮮はオリンピックは参加しない? 南北朝鮮に関係改善のチャンスはあるのか>

ピョンチャン(平昌)冬季オリンピック&パラリンピックの開催が来年2月初旬に迫り、韓国は準備の最終段階に入っている。北朝鮮との間には依然として懸案事項や障害があるが、一部の韓国国民はオリンピックを「両国の関係修復のチャンス」とみている。

平昌オリンピックは「平和のオリンピック」であるべきだと強調する韓国は、北朝鮮にも参加を促してきた。康京和(カン・ギョンファ)外相は11月25日、北朝鮮が五輪に参加すれば「南北の和解を促進する特別な機会」になるだろうと発言した。

国連総会は11月中旬、平昌五輪の開催期間中は加盟国に武力行使を控え、停戦を求める決議案を採択。北朝鮮もこの決議を承認したことは「政治的な状況に関係なく、オリンピックに貢献する意思と責任があること」を示していると、康は語った。

だが、11月29日に北朝鮮がおよそ2カ月半ぶりにICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射し、緊張が高まった。13日には北朝鮮の兵士が韓国に亡命する事件も発生し、両国の関係悪化を懸念する声が出ていた。

これに関連して、韓国が軍事境界線に設置している大音量スピーカーに北朝鮮が抗議してくるのではないかと心配する向きもある。スピーカーによる北朝鮮向けの宣伝放送が、今回の北朝鮮兵の亡命につながった可能性もあるからだ。

亡命事件の際、北朝鮮側は軍事境界線を越えてライフル銃を発砲し、さらには亡命兵を追っていた北朝鮮兵が軍事境界線を越えた。これが朝鮮戦争の休戦協定に違反するとして、韓国政府は北朝鮮に強く抗議すべきだという声も国民の間では強まっている。

それでも専門家の多くは、亡命事件が南北間の現在の雰囲気に大きな影響を及ぼすことはないと主張する。この問題はとにかく「見過ごす」ことが、両国にとって得策だからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億

ビジネス

米国株式市場=小幅高、利下げ期待で ネトフリの買収
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中