最新記事

中東

サウジ皇太子が進める危険なイスラム軍事同盟

2017年12月8日(金)16時30分
クリスティナ・マザ

イスラム軍事同盟の国防相会議に向かうサルマン皇太子(11月26日、リヤド) Faisal al Nasser-REUTERS

<反イラン同盟ではないというけれど......スンニ派諸国の結束を強化する狙いは明白>

この地球上からテロリストを一掃する――。サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が、そんな勇ましい宣言をしたのは11月26日、首都リヤドで開かれたイスラム軍事同盟の国防相会議でのことだ。

「ここ数年、ここに集まった全ての国でテロが起きてきた。しかしわれわれの間には連携がなかった」。会場に集まった約40カ国の代表は、ムハンマドの言葉に聞き入っていた。

イスラム軍事同盟は2015年に設立され、エジプトやバーレーン、トルコから、アフガニスタン、ソマリア、ウガンダまで、イスラム教徒が人口の大多数を占める多くの国が参加する。最高司令官はパキスタンのラヒール・シャリフ前陸軍参謀長だ。

設立から2年間は目立った活動をしていなかったが、ここへ来て「テロとの戦い」を前面に押し出して結束をアピールしている。これに対して、専門家は称賛と冷笑の入り交じった反応を示している。

一方では、中東におけるテロとイスラム教スンニ派過激主義を取り締まる上で、ムハンマドの役割に大きな期待が集まっている。特に最近注目されているのは、ISIS(自称イスラム国)などのテロ組織を触発してきた厳格なワッハーブ派の穏健化だ。

「中東の最も暴力的テロ組織のほとんどは、サウジアラビアが国教とするワッハーブ派を信奉している」と、ブルッキングズ研究所中東政策研究センターのクリス・メセロールは語る。「だからムハンマドが、特にワッハーブ派過激主義を非難できれば、中東全体の平和と安定を大きく推進できるだろう」

放火魔と消防士の二役

実際、サウジアラビア政府は、宗教的な穏健化を進める姿勢を明らかにしてきた。最近発表された女性に車の運転を認める決定も、同国が厳格な宗教法を緩和している証拠とみられている。

だが、テロとの戦いにおけるサウジアラビアの歴史には、光と影が交錯する。「サウジアラビアは長年、放火魔と消防士の両方の役割を果たしてきた。一方では過激主義の火をあおり、他方では火消しを試みてきた」と、メサロールは指摘する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米イラン協議、6日にオマーンで開催 核問題中心に討

ワールド

米政権、ミネソタ州派遣の移民職員700人削減へ=国

ビジネス

米財務省が1250億ドルの借り換え発表、入札規模は

ビジネス

米1月ISM非製造業指数、53.8と横ばい 投入コ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流していた? 首相の辞任にも関与していた可能性も
  • 4
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 7
    電気代が下がらない本当の理由――「窓と給湯器」で家…
  • 8
    戦争の瀬戸際の米国とイラン、トランプがまだ引き金…
  • 9
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 10
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中