最新記事

中朝関係

北朝鮮問題、中国の秘策はうまくいくのか――特使派遣の裏側

2017年11月20日(月)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

それを確認した上で、中国は特使を北朝鮮に派遣することを決めたのである。このタイミングを「党大会の報告」という理由を付けて選ぶことができるように、10月26日には敢えて北朝鮮を除外したという、中国の周到な戦略が見えてくる。

トランプ訪中期間に、水面下で米中両国の間に何らかのコンセンサスが得られていたものと考えられる。

それを裏付けるトランプのツイートや発言

それを裏付けるように、トランプは連続ツイートをしたり、そのツイートに対する質問に対して回答したりしている。11月12日から17日の発信や発言には以下のようなものがある。

●私は彼(金委員長)と友人になろうと一生懸命やっている。いつの日か実現するかもしれない!

●(金委員長と友人になるのは)奇妙なことかもしれないが、いかなる可能性もある。個人的関係ができることは、北朝鮮にとっても世界にとっても良いことだ。実現するかは分からないが、実現すれば非常に素晴らしい。

●習近平国家主席は、朝鮮半島の非核化というわれわれの共通の目標を実現するために、中国の偉大な経済的影響力を行使してくれると誓ってくれた。

●中国が特使を北朝鮮に送るぞ。これは大きな動きだ。何が起きるか見てみよう!

北朝鮮の対応

宋濤は17日に平壌に着くなり、金正恩(朝鮮労働党)委員長の側近である崔竜海(チェ・リョンヘ)党副委員長とも会談した。中聯部によると双方は、「中朝関係発展のため共に努力する必要性について一致した」という。

18日、朝鮮労働党の外交部門を統括する李洙ヨン(リ・スヨン)党副委員長と会談し、朝鮮半島を含む地域情勢や中朝関係などの問題について意見を交わしたのち、北朝鮮側は宴会を催して歓迎の意を表している。

しかし、20日、宋濤が帰国する日になっても金正恩との面会のニュースは流れて来ない。会ったのか否かに関しては不明のままだ。おそらく、金正恩は中国側が出す「威嚇的条件」を、すぐさま呑むつもりはないということの表れだろう。交渉は、ようやく入り口の段階に入ったものと見ていいかもしれない。

なぜなら、北朝鮮の韓大成(ハン・テソン)駐ジュネーブ国際機関代表部大使は17日、中国がロシアとともに提案してきた「双暫停」に関しては受け入れる可能性がある含みを表明している。ロイター電が伝えた。

何度も繰り返し書いてきたが、「双暫停」とは、「米朝双方が軍事的行為を暫定的に停止して話し合いのテーブルに着く」という提案である。韓大成は「米韓側が受け入れたら、われわれも将来どうするかを考える」と述べている。そのことから考えると、反応は悪くないと考えていいだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏政権崩壊なら赤字削減で妥協不可避=財務相

ワールド

ロ朝首脳会談始まる、北朝鮮のロシア派兵にプーチン大

ビジネス

国債先物反落、30年金利が最高水準更新 財政懸念が

ビジネス

ソニーG、ソニーフィナンシャルの分離を10月1日付
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 10
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中