最新記事

FRB

トランプが断行したFRB議長交代の不安要素

2017年11月9日(木)17時20分
ジョーダン・ワイスマン

トランプ(左)と記者会見に臨むパウエル。経済学博士号を持たないFRB議長は30年ぶりだ Carlos Barra-REUTERS

<次期議長のパウエルFRB理事は弁護士出身。イエレンの金融政策を引き継ぐというが......>

ジャネット・イエレン米FRB議長の4年の任期は成功だったと言っていい。冷静かつ慎重な米経済の舵取りを通じ、低失業率と堅調な経済成長を実現させた手腕は見事だった。

それでも、ホワイトハウスは人事の刷新に踏み切った。FRB議長は少なくとも2期務めるのが慣例だが、トランプ大統領は11月2日、来年2月で任期が切れるイエレンの後任にジェローム・パウエルFRB理事を指名すると発表した。

トランプは好調な株価と「うまくいっているものをいじるな」という原則に基づき、イエレンの再任も真剣に考えていたらしい。だがブルームバーグ通信によれば、最終的には「FRBに大統領の独自色を出す」べきだというムニューシン財務長官の助言に従った。

パウエルには3つの利点があった。共和党員なので議会共和党の受けがいいこと。イエレンの金融政策を基本的に引き継ぐ可能性が高く、一部の強硬派以外には歓迎されそうなこと。金融業界への厳しい規制にイエレンほど積極的ではなく、銀行の支持が期待できることだ。

だからといって、次期FRB議長として理想の人材というわけでもない。パウエルは法律の専門家だ。経済学博士号を持たないFRB議長は、1987年に退任したポール・ボルカーまでさかのぼる。

イエレンは「教育係」に?

だが、そのボルカーは80年代のインフレを抑え込んだことで高く評価されている。パウエルもエコノミストではないが、金融畑の経験は長い。投資銀行からジョージ・H・W・ブッシュ政権の財務次官に転じ、その後投資ファンド「カーライル・グループ」の共同経営者も務めた。

この経歴がパウエルの武器になるかもしれない。学者出身のベン・バーナンキ前FRB議長については、銀行業務の経験がなかったため、07年世界金融危機の兆候を見逃したのではないかと一部で指摘されている。

ただし、パウエルは12年にFRB理事に就任するまで、経済学の知識はお世辞にも豊富とは言えなかった。

「マクロ経済や金融政策はあまりよく知らなかった」と、金融大手UBSのアメリカ担当チーフエコノミストでFRB出身のセス・カーペンターはワシントン・ポスト紙に語った。

「(金融問題について)できる限り深く正確に学ぶため、スタッフや同僚と多くの時間を過ごすようにしていた」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮、金正恩氏が決断すれば短期間に核実験実施の可

ビジネス

トヨタ、通期業績予想を上方修正 純利益は市場予想下

ビジネス

訂正マネタリーベース、国債買入減額で18年ぶり減少

ビジネス

テスラ、10月の英販売台数が前年比半減 欧州諸国で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中