最新記事

日本企業

検査データ改ざんはBtoBビジネスへの甘え? 契約軽視の日本的風潮

2017年11月28日(火)19時20分

民間同士の契約違反を軽視する姿勢は、公表姿勢にも表れている。三菱マテリアルの子会社、三菱電線では、今年2月に不正を把握したにも関わらず、出荷を停止したのは10月23日。不適合品が混じっている可能性があることを知りながら、約8カ月も出荷を続けていたことになる。

東レの日覚社長は「法令違反があった場合、安全上問題がある場合、社会的に影響を及ぼす恐れがある場合は対外公表する」との基準を示したうえで、今回の事案は、ネットへの書き込みとそれに対する問い合わせがあったことや、神戸鋼など一連の不祥事がなければ、公表するつもりはなかったと述べている。

海外では厳しい反応も

現状、一連の不祥事に関連した訴訟などは起きていない。ただ、専門家は、海外では厳しい反応も起こり得ると指摘する。

山口利昭法律事務所の山口利昭弁護士は「海外であれば、適切な権利行使をしなければ株主から取引先の役員が賠償責任を問われる可能性があるため、全く対応は異なるものと考える」と話す。また「取引先要求仕様の充足に疑義がある場合には、海外企業であれば(取引契約に明記されている)監査権を行使して厳密な調査活動を行う。いわゆる『性悪説』に基づく行動がとられる」との見方を示している。

中島弁護士も「場合によっては、エンドユーザーからクラスアクション(集団訴訟)が起きてもしょうがない。企業同士が必要としたスペックで決めた契約、その基準を下回ったら不安。不安に対する損害賠償は十分に有り得ると思う」と述べている。

神戸鋼は、アルミニウム製品などのデータ不正問題に関して、米司法当局から関連書類の提出要求を受けている。中島弁護士は「海外で多額の損害賠償や制裁金の対象となるかどうかは経営陣が不正を認識していたかどうかがポイントになる」との見方を示している。同社は、年末までに、外部調査委員会による原因究明と再発防止策を取りまとめることとしており、経営陣の関与の有無が注目されることになる。

(清水律子)

[東京 28日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、クックFRB理事を異例の解任 住宅ロー

ワールド

トランプ米政権、前政権の風力発電事業承認を取り消し

ワールド

豪中銀、今後の追加利下げを予想 ペースは未定=8月

ワールド

エルサルバドルへ誤送還の男性、再び身柄拘束 ウガン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 7
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中