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実力で抜擢した信長、夢で動かした秀吉...戦国リーダーの人材活用術

2026年2月11日(水)13時41分
昼間 たかし (ルポライター*PRESIDENT Onlineからの転載 )
だから「豊臣家の天下」は秀吉1代で終わった...石田三成、加藤清正を見ればわかる秀吉の「たった一つの弱点」

Richie Chan -shutterstock-

<NHK「豊臣兄弟!」では、桶狭間の戦いの後に、信長(小栗旬)が褒賞を与えるシーンが描かれた。実際の信長や秀吉は、どのような人事戦略をとっていたのか。ルポライターの昼間たかしさんが、文献などを基に史実に迫る――。>

実績のみで評価する"信長の先進性"

NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」。桶狭間の戦いから美濃攻めへと小一郎(仲野太賀)と藤吉郎(池松壮亮)兄弟が活躍する舞台が整いつつある。

これまでの放送回で筆者が注目したのは、第4回。桶狭間の戦いの後の信長(小栗旬)から褒賞を受けるシーン。ここで小一郎が地位よりも銭が欲しいと求めたシーンは話題になった。


でも、それよりも注目したいのは信長の判断だ。なにしろ、単なる足軽に過ぎなかった小一郎にいきなり近習にしてやると命じているのだ。なんとも素早い人事の決定。身分にとらわれることなどなく、実績のみで評価しようとする信長の先進性が垣間見える部分である。

信長の人事政策は実に現代的だ。常に旧弊を打ち破り、年功序列や家格などに関係なく成果のみで評価しようと試みている。この成果主義の特徴は、武功一辺倒ではなく総合評価になっていたことだ。

歴史研究者の小和田哲男は、桶狭間の戦いの後にもっとも褒賞されたのが、一番槍の服部小平太でも、首を獲った毛利新助でもなく簗田政綱に与えられたことを指摘し、こう語っている。


「柳田(註:原文のまま)」は、桶狭間の戦いの日に、今川軍がどのような動きをするかということを逐一信長に報告したのです。義元の本隊は約5000人で、桶狭間で休憩をとること、さらにこの日義元は馬ではなく輿に乗って出陣していること。これらから、信長としては、桶狭間で昼頃に奇襲攻撃を行えばよいと判断したのです。この判断を支えた情報が重要である、という価値基準を示したことで、戦国時代が大きく変わりました」

(「戦国の論理と武将の心理(準備委員会企画特別講演,I 日本教育心理学会第51回総会概要)」『教育心理学年報』第49集、2010年)

信長が背負っていた「旧秩序との共存」

この信長の評価軸は、藤吉郎(秀吉)の出世にも表れている。

当時、武将として評価されるのは「槍働き」つまり戦場での華々しい武功だった。前田利家は「槍の又左」と呼ばれ、堂々とした体格で敵を次々と倒す典型的な戦国武将だった。一方の秀吉は、背も低く体格にも恵まれていない。

ところが信長は、前田利家よりも秀吉を先に出世させた。信長は、目立たない地道な工作を、槍働きよりも高く評価したのである。こうした信長の多角的な人事考課制度を、もっとも理解して発展させたのが秀吉であった。

いくら革新的な評価軸を持っていても、織田家には代々仕えてきた譜代の重臣たちがいる。柴田勝家、丹羽長秀といった宿老たちは、信長の父・信秀の代から織田家を支えてきた功臣だ。彼らを無視して新参者ばかりを抜擢すれば、組織は分裂する。

信長は革新的であると同時に、現実主義者でもあった。足利義昭を奉じて上洛したのも、朝廷との関係を慎重に保ったのも、「旧秩序を完全に破壊すれば足元をすくわれる」という計算があったからだろう。実際、義昭を追放した後も、信長は朝廷から官位を受け、形式上は既存の権威に従う姿勢を崩さなかった。

信長は、パイオニアであるがゆえに、革新性を持ちながらも慎重にならざるを得なかった。

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