最新記事

スペイン

カタルーニャ独立、自治権停止時のカギ握る州警察の動き 

2017年10月27日(金)18時41分

10月24日、スペイン政府がカタルーニャ州の自治権を停止する準備を進めているなか、同州の警察は「昨日までの上司」である州政府トップの排除を命じられた場合、中央政府とカタルーニャ独立の大義のいずれに従うのだろうか。写真は10日、バルセロナの地方議会前を歩く州警官(2017年 ロイター/Rafael Marchante)

スペイン政府が27日にもカタルーニャ州の自治権を停止する準備を進めているなか、同州の警察は「昨日までの上司」である州政府トップの排除を命じられた場合、中央政府とカタルーニャ独立の大義のいずれに従うのだろうか。

スペイン警察は1日、違法とみなされたカタルーニャ独立住民投票を阻止するため、警棒やゴム弾を使用したことで国際的な批判を浴びた。カタルーニャ州警察は、投票阻止の行動を拒否。この住民投票は現代スペインの憲政史上で最悪の危機を招いた。

分離独立を掲げるカタルーニャ州政府は、自治権剥奪というスペイン政府側の計画に抵抗する意志を示している。プッチダモン州首相及び自治政府を強制的に退去させるよう命令が出たとしても、分裂して士気低下しているカタルーニャ州警察、通称「Mossos d'Esquadra」(カタルーニャ語で「若者たちの部隊」を意味する)が命令に応じるかどうかは疑問視されている。


再び、国家警察が最前線に立つ可能性もある。

独立賛成派と反対派のあいだで生じた不信感によって、カタルーニャ州警察は分裂しており、国家警察の部隊とも疎遠な関係にあることが、州警察や国家警察への取材で明らかになった。

裁判所の記録によれば、カタルーニャ州警察長官は、配下の部隊が介入することなく投票の実施を許したことで反乱扇動罪の容疑で取り調べを受けており、内務省が管轄する治安警察側は長官に不利な証拠を提示している。

取材に応じた州警官5人は、総勢1万7000人の州警察は独立賛成派と反対派に分裂していると述べ、5人のうち3人は、州政府閣僚や州議会議員の権限を剥奪するための実力行使には応じないと語った。

勤続15年で独立賛成派のベテラン州警官は、匿名を条件に、「無抵抗の人々に対して、実力を行使して自分の警棒で相手を殴ることはしない」と語った。

他の多くの警察官も同じように感じていると述べつつ、同警官は次のように付け加えた。「しかし、命令には従わなければならないだろう。家族を養っていかなければならないから」

州警察の広報担当者によれば、州警察は中立であり、「いかなる政治的やイデオロギー的な基準にも」従わない、という。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、16-17日に訪中 習主席との関係

ビジネス

インフレ低下の確信「以前ほど強くない」、金利維持を

ワールド

EXCLUSIVE-米台の海軍、4月に非公表で合同

ビジネス

米4月PPI、前月比0.5%上昇と予想以上に加速 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 10

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中