最新記事

北朝鮮情勢

北朝鮮がロシアの助けでネット接続強化、サイバー攻撃能力向上か

2017年10月3日(火)18時43分
トム・オコナー

北朝鮮・平壌の科学技術殿堂で実地指導をする金正恩委員長 REUTERS/KCNA

<核・ミサイル開発問題で中国の対朝姿勢が厳しくなるなか、北朝鮮が頼ったのはロシアだった>

ロシアの大手通信事業者が、北朝鮮とインターネット接続サービスの契約を結んだ。サイバー戦争への備えと見る向きもある。

ロシア通信大手トランステレコムは国営ロシア鉄道の子会社で、同社によれば地球上で最大規模の光ファイバー網を持つという。そのトランステレコムが、孤立する北朝鮮に対してインターネット接続サービスの提供を開始したと、米ジョンズ・ホプキンス大学の北朝鮮分析サイト「38ノース」が伝えた。

【参考記事】ロシアが北朝鮮の核を恐れない理由

アメリカが北朝鮮の核・ミサイル開発問題をめぐって中国への圧力を強めており、北朝鮮は最大の同盟国でネット接続を依存してきた中国が信じられなくなり、ロシアに助けを求めたのかもしれないと、北朝鮮のIT情報を集めたブログ「ノース・コリア・テック」の管理人で38ノースの報告書を執筆したマーチン・ウィリアムズは言う。

「北朝鮮はアメリカの圧力にさらされる中国を見て、このままではネット接続を切られてもおかしくないと気付いたに違いない」とウィリアムズは本誌に語った。

【参考記事】中国は北朝鮮に侵攻して核兵器を差し押さえるか?

ウィリアムズは収集した通信データを解析し、北朝鮮時間の10月1日夜(米東海岸時間の同日午前5時)から新たな接続サービスが始まったことを突き止めた。トランステレコムは北朝鮮とロシアの国境を結ぶ橋経由でサービスを提供しているもよう。北朝鮮の人口は2500万人だがネット利用者はごくわずかで、これまでネット通信は中国国有通信大手、中国聯合網絡通信(チャイナユニコム)1社に依存していた。

サイバー防御か攻撃か

北朝鮮は国内の情報統制を徹底しており、ネットに接続できるのは大学や大手企業、スマホを所有する外国人、政府機関、サイバー軍などに限られている。ロシアの新たな通信会社と契約を結び、国内の通信網を拡充することで、北朝鮮はかつてなく大容量で高速なネット環境を手に入れた可能性があると、ウィリアムズは言う。ロイターはサイバーセキュリティーの専門家の言葉として、北朝鮮はサイバー攻撃を行う能力を増強したのではないか、と推測する。

あるいは、防御のためかもしれない。米紙ワシントン・ポストは9月30日、トランプは大統領就任初期の段階で、北朝鮮の情報機関を標的にしたサイバー攻撃を命じる大統領令に署名しており、実際、攻撃は9月30日まで行われていたという。

トランステレコムの広報担当者は10月2日、英紙フィナンシャル・タイムズの取材に対し、「2009年に北朝鮮の通信事業者、朝鮮逓信会社(KPTC)と締結した合意に基づき、すでに北朝鮮で基幹ネットワークのインターフェースを保有していた」と言った。

(翻訳:河原里香)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ブラジル首脳が電話会談、貿易や犯罪組織対策など協

ビジネス

NY外為市場=ドル対円で上昇、次期FRB議長人事観

ビジネス

再送-〔アングル〕日銀「地ならし」で国債市場不安定

ビジネス

再送-〔マクロスコープ〕日銀利上げ判断、高市首相の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止まらない
  • 4
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 5
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 6
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 7
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 8
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 9
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 10
    【香港高層ビル火災】脱出は至難の技、避難経路を階…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中