最新記事

公衆衛生

ネズミ被害に悩むワシントンDC、ストリート仕込みの秘密兵器を投入

2017年10月16日(月)17時50分
松丸さとみ

Onur Dogus Lalegul-iStock

激増するネズミ、対抗するはストリート仕込みの......

米国ワシントンDCは、深刻なネズミ被害に悩んでいる。9月13日付けのワシントン・ポストによると、緊急を要さない事柄について自治体に相談できる電話番号311にかかってくる電話のうち、ワシントンDCではネズミの苦情が過去4年間で最多件数に達している。

ネズミ増加の原因は、人口増や、それに伴う飲食店の増加(ゴミの増加)、暖冬などが挙げられる。また、DC周辺で工事が行われており、ネズミを地下の住処から追いやっているのも原因だ。

ネズミは建物にダメージを与える他、電気コードを噛んで火災の原因となったり、病原菌をまき散らしたりする可能性がある。そのため、自治体はいくつか対策を立てて、ネズミ被害の軽減に取り組んでいる。例えば、年間8万5000ドル(1000万円弱)を費やし、太陽光電力でゴミを圧縮する最新鋭のゴミ箱を、ネズミが頻繁に出る場所に設置するなどだ。

さらに今年1月からは、「ブルー・カラー・キャッツ」というプログラムをスタートさせた。地元の動物愛護団体「ヒューメイン・レスキュー・アライアンス」(HRA)が、元野良猫をネズミ退治の任務に就かせるものだ。猫たちがネズミを退治するのと引き換えに、その「雇用主」となる企業や一般家庭は、屋外で猫に餌と水、寝床を提供する。

任務を与えられ第二の人...もとい猫生へ

この任務に就いた猫は40匹以上いるが、そのうちの1匹、オス猫の「ミソ」に焦点を当てた記事を掲載しているナショナルジオグラフィックによると、猫は十分餌を与えられていてもネズミなどを追う習性がある。そのため、「猫に餌を与えない方がネズミを捕ってくれるのではないか」と期待して猫に餌を与えないようなことがないように、との配慮から、このような条件が取り交わされたらしい。

HRAは、今回任務に就いた猫たちについて、これまで人間とはほとんど触れ合ったことのない、生まれも育ちもストリートでペットには適さない性格の猫ばかりを選出したとしている。そのため、ワシントン・ポストによると今回の任務に配属されなければ、殺処分となってしまった可能性が高かったという。つまり、ネズミ捕りの任務を与えられ、第二の人生ならぬ猫生を踏み出した子たちなのだ。

HRAは、すべての猫に去勢手術を施し、ワクチンを打ち、マイクロチップを埋め込んだ上で今回の任務に参加させている。しかし採用する側(企業や一般家庭)の費用負担は一切ない。そのためか、現在キャンセル待ちのリストができるほどの人気だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

EU、自動車業界の圧力でエンジン車禁止を緩和へ

ワールド

中国、EU産豚肉関税を引き下げ 1年半の調査期間経

ビジネス

英失業率、8─10月は5.1%へ上昇 賃金の伸び鈍

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、12月速報値は51.9 3カ月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 10
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中