最新記事

軍事

北朝鮮の旧式な対空装備、米軍B1爆撃機の撃墜は困難か

2017年9月28日(木)18時11分

9月26日、北朝鮮は朝鮮半島周辺を飛行する米爆撃機を撃墜すると威嚇している。ただ軍事専門家によると、大半の対空装備が冷戦時代の旧式なシステムであることを考えれば、強気の言い回しとは裏腹に実行は難しそうだ。写真中央の2機は、東シナ海上空で自衛隊機を演習を行う米空軍の爆撃機。9日提供写真(2017年 ロイター/Air Staff Office of the Defense Ministry of Japan/HANDOUT via REUTERS)

北朝鮮は朝鮮半島周辺を飛行する米爆撃機を撃墜すると威嚇している。ただ軍事専門家によると、大半の対空装備が冷戦時代の旧式なシステムであることを考えれば、強気の言い回しとは裏腹に実行は難しそうだ。

過去1週間で、米朝の言葉の応酬はどんどん激しさを増している。トランプ大統領が北朝鮮が米国と同盟国を脅かし続けるなら「破壊する」と発言すると、北朝鮮側は「宣戦布告だ」と切り返し、領空外であっても米爆撃機を撃墜することも含めた自衛手段を行使する権利があると主張した。

23日には米空軍のB1戦略爆撃機が、F15戦闘機に直援されて北朝鮮東方を飛行。国防総省の説明では、今世紀に入って非武装地帯の最も北側を飛んだ。

米シンクタンク、ランド研究所の軍事専門家ブルース・ベネット氏は、超音速のB1爆撃機は精密な電子技術を駆使した反撃能力を持つ上に、通常は4機のF15戦闘機が援護につき、このF15は、古いタイプの北朝鮮のどの戦闘機にも勝てる公算が大きいと指摘した。

さらにベネット氏は「北朝鮮が十数機に及ぶ戦闘機を送り込んでF15を制圧しようとするかもしれないが、米軍は事態を掌握し、北朝鮮から日本方面にさっさと離脱する方法を選ぶだろう」と付け加えた。

ミサイル専門家の見立てでは、北朝鮮は米軍機に対して地対空ミサイルの発射を試みる可能性もあるが、北朝鮮領空外まで届くものはほとんどないのが実情だ。

米国際戦略研究所(IISS)のミサイル専門家マイケル・エルマン氏は「米軍機が海上にとどまる限り、まずは安泰となる」と話した。

探知能力に疑問

北朝鮮は、最新鋭の米軍機を探知できるのかさえあやしい。1969年には同国のミグ21が、偵察任務を遂行していた米海軍のEC121を撃ち落とした例がある。しかしEC121は、1940年代の「スーパーコンステレーション」をベースに開発された旧式機だった。

最新鋭の米軍機はレーダーに映りにくいステルス性能を持ち、韓国政府筋の話では、北朝鮮はエネルギー供給に制約があるためレーダーシステムを24時間稼働させることもできない。

北朝鮮の防空能力に詳しい韓国の専門家は「制裁や石油不足のハードルから、戦闘機が作戦から帰還できるかどうかすら確信はない」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

実質消費支出5月は前年比+4.7%、2カ月ぶり増 

ビジネス

ドイツ、成長軌道への復帰が最優先課題=クリングバイ

ワールド

米農場の移民労働者、トランプ氏が滞在容認

ビジネス

中国、太陽光発電業界の低価格競争を抑制へ 旧式生産
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 6
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中