最新記事

チェチェン

ロヒンギャ迫害にイスラム教のチェチェンが抗議

2017年9月15日(金)18時50分
デイミアン・シャルコフ

迫害を逃れてバングラデシュに避難してきたロヒンギャ難民 Mohammad Ponir Hossain-REUTERS

<ミャンマーの少数民族ロヒンギャの迫害に、同じイスラム系のチェチェン首長が怒りを表明。しかしロシアはミャンマーとの関係が深いために頼りにはならない>

世界で今、最も迫害されているといわれるミャンマー(ビルマ)のイスラム系少数民族ロヒンギャ。彼らへの連帯を示す動きが思わぬ所で広がっている。

ロシア南部チェチェン共和国のカディロフ首長は、「イスラム教徒へのジェノサイド(大量虐殺)」を非難しないようなロシア政府には従わないとYouTubeで表明。首都グロズヌイでは、ロヒンギャへの暴力行為が増加していることに抗議する集会に多数の住民が参加した。

ミャンマーから隣国バングラデシュに逃れたロヒンギャ難民は、8月下旬以降で9万人近くに及ぶ。彼らの多くが、ミャンマー軍によるレイプや殺人、放火が横行していると訴えている。

ロシアのプーチン大統領の「歩兵」で、「アラーのしもべ」と自称するカディロフは、「ロシアが悪魔(ミャンマー当局)を支持するなら、私はロシアに反対する立場を取る」と明言した。

ロヒンギャ保護のためにチェチェン軍を出動させるのは地理的に難しいが、今の状況にいてもたってもいられないと吐露。「許されるなら核攻撃して、子供や女性、老人を殺した奴らを一掃したい」とまで発言した。

【参考記事】アルカイダがミャンマーに聖戦を宣言----ロヒンギャ迫害の報復で

だが、カディロフ自身も決して清廉な人物ではなく、数々の人権侵害をめぐって非難されてきた。99~09年の第2次チェチェン紛争時にロシア政府への忠誠を誓って以来、チェチェンでの権勢を誇り、チェチェンとロシアの国益は一致すると主張してきた。

今回、ロシア政府との対立も辞さないと表明したのは異例だが、ロシアがミャンマー当局を支持することはないはずだと、譲歩するような発言もしている。むしろ強い怒りの矛先は「懸念を表明するだけ」の国連に向けていた。カディロフは抗議集会にも参加し、プーチンが「あらゆる権威と世界における影響力を使って」ロヒンギャ迫害をやめさせるよう呼び掛けた。

だが皮肉にも、今年3月に国連でロヒンギャ迫害への非難声明案が協議された際、反対したのはロシアと中国だった。ロシアはミャンマー政府にとって、長年の貿易と軍事協力の相手国。「歩兵」の頼みは聞き届けられそうにない。

本誌9月12日発売最新号掲載>

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国の和平案でウクライナに圧力、欧州は独自の対案検

ワールド

プーチン氏、米国のウクライナ和平案を受領 「平和実

ビジネス

ECBは「良好な位置」、物価動向に警戒は必要=理事

ビジネス

米製造業PMI、11月は51.9に低下 4カ月ぶり
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体制で世界の海洋秩序を塗り替えられる?
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中