最新記事

中国共産党

毛沢東の孫、党大会代表落選――毛沢東思想から習近平思想への転換

2017年9月11日(月)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

毛沢東の孫・毛新宇と、その父親で毛沢東の次男・毛岸青の遺影 REUTERS/China Daily

毛沢東の孫の毛新宇が第19会党大会代表に落選した。毛沢東は生前、一度もこの孫に会おうとしなかった。毛新宇が落選した背景には彼個人の問題と毛沢東思想から習近平思想への転換を図る戦略と逡巡が潜んでいる。

毛沢東に冷遇された毛新宇の父親

毛沢東(1893年-1976年)の孫、毛新宇は1970年、北京で生まれた。父親は毛沢東の次男、毛岸青(1923年-2007年)。毛沢東の長男、毛岸英(1922年-1950年)は朝鮮戦争が始まった1950年の11月に戦死した。二人の息子とも最初の妻、楊開慧(ようかいけい)(1901年ー1930年)と毛沢東との間に生まれた子だ。二人の間には三男の毛岸龍もいた。

蒋介石率いる国民党軍が共産党軍の掃討作戦をしている中で、1930年、子供3人を連れて毛沢東と離れ離れにいた楊開慧は国民党軍に逮捕された。国民党軍から「毛沢東と離婚し、毛沢東に対する非難声明を出せば助けてやる」と脅迫されたのだが、楊開慧はそれを拒否して銃殺されてしまう。

だというのに、毛沢東は井崗山(せいこうざん、ジーン・ガン・サン)に立てこもり、賀子珍という別の女性を愛していた(『毛沢東 日本軍と共謀した男』p.158)。

このとき毛岸英は8歳、毛岸青は7歳で、子供たちは3人とも釈放されたが、一番下の子はまもなく死亡。毛岸英と毛岸青は毛沢東の部下の手配により上海に送られて転々と流浪の生活を送る。1936年4月に、上海にある共産党地下組織は二人をモスクワにある国際保育院に送ることに決定。このとき協力を求めたのが国民党軍で蒋介石が最も信頼していたはずの張学良である。二人がソ連に渡ったパスポートは、今も上海档案館にある。

1947年に二人は帰国して毛沢東のそばに戻るのだが、1949年に中華人民共和国が誕生した後の1951年、毛岸青がちょっとした失敗をした時に、毛沢東が激しく毛岸青を叱責し暴力も振るったため、毛岸青は精神疾患に陥ったという説がある(精神に異常を来した時期と原因に関しては諸説ある)。ただ精神疾患を患っていたことは間違いなく、そのため大連の病院に入院。そこで看護婦に思いを寄せるようになったが、無理やり、張邵(しょう)華と結婚させられる。

張邵華の姉は戦死した毛岸英の妻。母親が何としても自分の娘を毛沢東と縁のある者に嫁がせたいという執念があり、毛沢東との間で取り決めて結婚させられた。

毛沢東は一度も自分の孫に会おうとしなかった

こうして生まれたのが毛新宇だが、毛新宇の出生に関しても諸説ある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ベネズエラ石油「封鎖」に当面注力 地上攻撃の可

ビジネス

午前の日経平均は小反発、クリスマスで薄商い 値幅1

ビジネス

米当局が欠陥調査、テスラ「モデル3」の緊急ドアロッ

ワールド

米東部4州の知事、洋上風力発電事業停止の撤回求める
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中