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軍参謀ら摘発から読み解く習近平の狙い----新チャイナ・セブン予測(2)

2017年9月4日(月)08時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

10月10日には中央軍事委員会が全軍の各機構および全国の各機関の軍事委員会及び党委員会書記を一堂に集めて軍事会議を開き、再び「全面的に郭伯雄・除才厚の流毒影響を徹底的に粛清せよ」という強烈な命令を、習近平は出したのだった。

5年間、この日を待っていたのである。

まず2016年12月31日に軍事大改革を行ない、総政治部や総後勤部といった腐敗の温床の組織そのものを解体し、習近平が軍の総司令官になり得る機構を形成した。

それでも中央軍事委員会委員は党大会で決めるので、5年間待たねばならない。

だから、党大会寸前に一気に中央軍事委員会委員の軍隊における職位を剥奪して党大会に持ち込み、党大会で中共中央委員会メンバーが決まった時点で、中央軍事委員会メンバーの改選を行う。

これが今回の「取り調べ」劇の正体である。

新チャイナ・セブンと連動――「先軍後党」

この「正体」を見ぬかない限り、新チャイナ・セブンのメンバーが決まっても、それが何を意味するかが分からないだろう。むしろ、中央軍事委員会委員の動向をしばらく追っていかないと、その神髄は見えてこない。

今年10月11日に開催される第18回党大会の七中全会で、新チャイナ・セブンのリストも新中央軍事委員会のリストも出てくる。このリストを党大会で選選出された中央委員会に提出して、そこで投票により決まる。習近平は、10月11日まで、案を練る時間が与えられているのだ。

いま中国では「先軍政治」ではないが、「先軍後党」(軍が先で党はその後に続く)という概念が生まれつつある。

そのため、中央軍事委員会を撤廃して、複数の中央軍事委員会副主席の身を置き、習近平が郭伯雄・除才厚の残党(流毒)によって「架空」となることを防ごうという考え方さえ出てきているほどだ。

またしても日本のメディアが...

9月1日、産経新聞が「中国、胡錦濤派の軍首脳2人を拘束 規律違反の疑いで」という見出しの記事を配信した。書いてある内容自身は、香港メディアの発信により全世界の大陸以外の中文メディアが書いている事実と同じだ。違うのは「胡錦濤派の軍首脳」と銘打っていることである。

世界中のどのメディアを見ても「胡錦濤派」と書いてある報道は一つもない(筆者の知る限りは)。たとえば、ニューヨークにある多維新聞の「香港メディア:中央軍事委員会房峰輝張陽落馬」をご覧いただきたい。ここに示してあるキーワードは「中共反腐(反腐敗)、軍委(軍事委員会)、郭伯雄」の三つで、どこにも「胡錦濤派」という単語は出て来ない。

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