最新記事

自動車

ドイツ車の信頼が大きく地に落ちた理由

2017年8月28日(月)11時18分
バーナード・リーガー

繁栄だけを追い求めて

自動車業界のなれ合いを暴いたシュピーゲルの記事は、戦後ドイツの厳格な品質と競争の追求というイメージを打ち破り、大きな衝撃を与えた。

今日、ドイツの自動車企業は品質と信頼性を生かし、新市場での販売を拡大している。VWグループの中国での売上高は08~16年で100万から400万台と4倍になり、世界最大の自動車メーカーとなった。

最近のドイツ自動車産業の好業績は、東西統合の苦難の後、ドイツが品質を高める努力を通じて繁栄への道を歩み始めた証しに見えた。だが今、ドイツ人は自動車産業が常になりふり構わず成功を追い求めてきただけではないかと考えている。

【参考記事】アマゾン+スーパー、宅配改革への大勝負

このスキャンダルの背後には、根深い問題が潜んでいる。環境規制が厳しくなるなか、競争相手の日本やアメリカ、中国がハイブリッド車や電気自動車を有望視する一方、ドイツ勢だけはディーゼルという古い技術に絶大な信頼を置いている。その根本的な理由は分からない。

だが、ドイツ自動車業界が掲げてきた信頼という看板の裏側は見えた。安定と引き換えならば、違法行為にも手を染めてしまうようだ。

戦後の安定の象徴であるドイツ車は、国内外で価値を失い始めている。この傾向が自動車部門の将来に与える影響は、まだ分からない。

From Foreign Policy Magazine

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

[2017年8月29日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米PCE価格、6月前年比+2.6%に加速 関税措置

ワールド

米、新たな相互関税率は8月1日発効=ホワイトハウス

ワールド

米特使、イスラエル首相と会談 8月1日にガザで支援

ビジネス

エヌビディア「自社半導体にバックドアなし」、脆弱性
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 9
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中