最新記事

中東

岐路に立つカタールの「二股外交」

2017年6月16日(金)10時20分
フレッド・カプラン(スレート誌コラム二スト)

magw170615-qatar02.jpg

カタールはイランなどシーア派との関係構築に力を入れてスンニ派諸国に嫌われた Maseem Mohammed Bny Huthil-REUTERS

今回の断交が、アメリカ主導のテロ組織ISIS(自称イスラム国)掃討作戦に与える影響は不透明だ。米軍高官らは今月初め、この戦略におけるカタールの貢献を称賛したばかりだった。一方トランプは、サウジアラビアの断交の決断を称賛したが、翌日にはタミムに解決の支援を申し出た。

だが、トランプはいまだに国務省や国防総省の高官指名を終えていない。これでは仲裁を支援しようにも、まともな戦略を練るのは不可能だ。そもそもトランプ政権が、今回の断交のニュースに驚いた(つまり察知していなかった)という事実だけでも十分懸念すべきだ。

長い目で見れば、今回の騒動がアラブ諸国にとってプラスに働く可能性はある。カタールが過激派勢力への支援をやめれば、ISISなどの掃討活動が急ピッチで進む可能性がある。

その一方で、カタールがスンニ派諸国と完全に共同歩調を取るようになれば、中東の宗派抗争は悪化する恐れがある。その二股外交に賛否両論はあるが、カタールは一種の緩衝地帯となり、危機を沈静化し、人質解放を助ける役割を果たしてきた。

カタールが敵でも味方でもない「第3の国」という在り方を否定された今、中東全体をのみ込む戦争が起こる可能性は高まったと言えるだろう。

© 2017, Slate

[2017年6月20日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、選挙での共和党不振「政府閉鎖が一因」

ワールド

プーチン氏、核実験再開の提案起草を指示 トランプ氏

ビジネス

米ADP民間雇用、10月は4.2万人増 大幅に回復

ワールド

UPS貨物機墜落事故、死者9人に 空港は一部除き再
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 5
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 6
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 7
    若いホホジロザメを捕食する「シャークハンター」シ…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中