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日本のCEOは技術革新を生き抜く自信がない

「自国の成長見通し」に自信を持っている日本企業のCEO(最高経営責任者)は昨年の91%に対して今年は71%、「自業界の成長見通し」に自信を持つのは昨年の92%から今年は41%と大幅に後退――。

コンサルティング会社・KPMGが6月15日に公表した、主要10カ国・11業種のCEO1261人を対象に実施した調査の結果(調査期間は2月21日~4月11日)からは、日本の経営者が自国や自業界の先行きについて極端に慎重になっている状況がハッキリと見て取れた。

これは、日本銀行が4月に公表した直近の短観の結果とほぼ同様だ。短観の業況判断DIは大企業製造業で現状の12から先行きは11と、1ポイントの低下。全産業全規模では現状の10から先行きは4と、6ポイント低下する想定となっている。

破壊的なテクノロジーに対応できない

日本企業が先行きに対して慎重になっている一因は、地政学リスクの高まりだ。中東や北朝鮮をめぐる情勢に加え、世界各地で頻発しているテロなど、地政学的な不確実性は確実に増している。こうしたリスク要因が企業経営者のマインドを慎重なものにしているという報告は、今回のKPMGの調査以外でもよく見られる。

今回の調査が興味深いのは、日本のCEOが慎重姿勢を強めているもう1つの理由を示唆している点である。それは「破壊的なテクノロジーに追随・対応できていない不安感」だ。

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日本からは売上高100億ドル以上の大企業を中心に100人のCEOが回答しているが、「自業界における破壊に関する認識」について87%が「今後3年間で技術革新により自業界に大きな破壊が起きると予想」している。これはグローバル調査の48%を大きく上回っている。同じ質問に対し、「技術破壊は脅威ではなく機会ととらえている」という回答が53%あったが、逆の見方をすると、相当な割合のCEOが「今後3年で技術破壊が起き、自業界にとって脅威になる」と考えていることになる。

数年前まで「技術立国」などと持てはやされていた日本に何が起きているのか。この間に生じたのは「技術の質」の変化だ。日本における調査結果をまとめた、KPMG/あずさ監査法人の宮原正弘アカウンティング・アドバイザリー・サービス事業部長は、そう指摘する。

「日本企業が秀でているのは、生産などのプロセスにおける技術改善が中心だった。だが、最先端のテクノロジーはAI(人工知能)やブロックチェーンなどを組み合わせて、ビジネスモデルそのものを変革していく技術。日本企業はその流れに十分に乗ることができていない」(宮原氏)

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