最新記事

シリア

アメリカはシリアを失い、クルド人を見捨てる--元駐シリア米大使

2017年6月20日(火)18時41分
トム・オコナー

サウジアラビアやカタールなどの湾岸アラブ諸国やトルコの支援も受けた反政府勢力は、アサド政権に対し大規模な攻撃を開始した。アメリカはシリアには武力行使しない方針だったが、CIA(米中央情報局)も最後は、反政府武装勢力のうち厳選した世俗派への軍事訓練や武器の供与を決定した。

この方針転換が公になった2014年以降、アメリカは終始後手に回ることになった。ロシアとイランは、アメリカが反政府勢力に投じるよりはるかに大量の支援をアサドに行った。その結果、世俗派だったはずの反政府勢力の多くの戦闘員がISISや国際テロ組織アルカイダなどイスラム教スンニ派の最も過激思想に転向していった。

反政府勢力の中にジハーディストが台頭するにつれ、アメリカはISIS掃討を優先する政策に舵を切り、クルド人主体のSDFへの支援を開始した。シリア内戦が始まった当初、多くのクルド人は、反アサドの機運が高まったことを肯定的に受け止めた。イラク北部のクルド人自治区のように、シリア北部でクルド人自治区を作るチャンスと考えたからだ。

だがSDFの戦闘員たちは戦いが進むにつれ、敵はISISだけではなく、トルコの支援を受けた反政府武装組織もいると思い知った。国内にいる約1500万人のクルド人の独立を阻止したいトルコは、SDFを国家安全保障上の脅威とみなしているのだ。

【参考記事】【解説】トルコのシリア越境攻撃――クルドをめぐる米国との確執

アメリカはクルド人を守らない

そもそもSDFは、シリア政府軍と反政府勢力の戦いの中では、ほぼ一貫して中立の立場だった。だがISISの支配地域が縮小の一途をたどり、アメリカとアサド政権の緊張関係が高まった今、SDFはシリア政府軍との戦いの前線に立っている。シリア政府軍とSDFが衝突した後の今週月曜、アメリカは初めてシリア政府軍機を撃墜した。SDF部隊の上空を飛行したのが理由だった。

【参考記事】欧米で報道されない「シリア空爆」に、アメリカの思惑が見える

クルド人がアメリカと手を結んだのは重大な過ちだったと、フォードは言う。イラク侵攻後にイラクを見捨てたのと同様に、米軍はシリアからISISが一掃され次第、クルド人勢力への支援を打ち切るとみるからだ。

「アメリカには、アサド軍からクルド人を守るつもりがない」とフォードは言った。「クルド人を利用するアメリカは、政治的に愚かなだけでなく、反道徳的だ」

(翻訳:河原里香)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米上院、26年度予算案の動議を否決 ICE予算に超

ビジネス

米11月貿易赤字、34年ぶりの急拡大 AI投資で資

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長人選を来週発表

ワールド

プーチン氏、キーウ攻撃1週間停止要請に同意 寒波で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大胆な犯行の一部始終を捉えた「衝撃映像」が話題に
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 5
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 6
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 7
    配達ライダーを飲み込んだ深さ20メートルの穴 日本…
  • 8
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 9
    致死率高い「ニパウイルス」、インドで2人感染...東…
  • 10
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 8
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中