最新記事

雇用

フランス大統領選、新労働スタイル「ギグ・エコノミー」が争点に

2017年4月14日(金)14時33分

4月11日、フランスの次期大統領は、ギグ・エコノミー(単発請負型経済)に待ったをかけるのか、前に進めるのかの決断を迫られるだろう。写真は、レストラン料理宅配サービス「デリバルー」の配達員。パリで7日撮影(2017年 ロイター/Charles Platiau)

パリのモンマルトル通りでは、昼時にパン屋の前にバゲットを買うための行列が昔から変わらず今も見られる。ただ最近は、レストラン料理宅配サービス「デリバルー」(本社英国)の配達員たちがスマートフォンで注文がきていないか確認したり、大通りを自転車で行き来する姿も目につくようになった。

この対照的な2つの風景の併存は、フランスのサービス経済の縮図だ。そして大統領選の有力候補はそれぞれ一方の肩を持っている。

極右の国民戦線(FN)を率いるマリーヌ・ルペン氏は、伝統的なパン屋などの商店主や、配車アプリとの競争に苦しんでいるタクシー運転手などを保護する意向。逆に中道候補のエマニュエル・マクロン氏は、デリバルーや米配車サービス大手ウーバーがもたらしたいわゆる「ギグ・エコノミー(単発請負型経済)」こそが、荒廃して失業率が全国の3倍近くに跳ね上がっている都市近郊地域(バンリュー)の雇用創出モデルだとみなしている。

ギグ・エコノミーに関しては、社会保障制度のない新たな「働く貧困層」を生み出すことへの懸念が広がっている。昨年12月にはタクシー運転手によるウーバーへの抗議デモが行われ、一部で暴力事件も発生した。

こうした中で次期大統領は、ギグ・エコノミーに待ったをかけるのか、前に進めるのかの決断を迫られるだろう。

デリバルーの配達員に取材したところでは、彼らはマクロン氏の意見に賛成している。正規社員であれば提供される事故の際の保険がつかない個人事業主の契約であるにもかかわらずだ。

21歳のある男性は大学をやめてパン屋やスーパーマーケットの職を探したが見つからず途方に暮れていたが、その後ごく簡単にデリバルーの配達員になれたと説明した。「正社員になりたい人の気持ちは分かる。でも私はこの仕事が持つ自由度が好きだ」と語るとともに、保険がない点に関しては「事故にあった日になれば考えるかな」と笑い、あまり深刻には受け止めていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中