最新記事

中朝関係

金正男氏の息子、キム・ハンソル氏と中国の動向――中国政府関係者を取材

2017年2月27日(月)13時50分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

2012年にフィンランドのテレビ取材に応じたキム・ハンソル Yonhapnews TV / YOUTUBE

ハンソル氏がマレーシアに行き、殺害された男性が父親・金正男氏であるか否かを確認する可能性、あるいはマレーシア警察がマカオに来てDNA採取をする可能性などに関して、中国政府はどのように考えているのか。

北朝鮮が金正男氏であることを否定したのがキーポイント

マレーシアで殺害された金正男(キム・ジョンナム)氏の長男である金漢率(キム・ハンソル。以下、ハンソル)氏は、現在マカオに住んでいるとされている。2013年にパリ政治学院に進学し、2016年に卒業。同年オックスフォード大学に進学予定だったが、暗殺される危険性があったことから留学を断念したとのこと。その後、北京に一時的にいたこともあるという説もあるが、基本的にマカオにいる可能性が高い。

いずれにしても中国の国土上にいるのは確かなようで、だとすれば中国政府側は暗殺を避けるために護衛を強化しているだろう。

本来なら、自分の父親が殺害されたというのだから、その長男であるハンソル氏が急いで現地に駆け付けるのは自由であり、自然の流れだ。

ところが問題は、北朝鮮が「死亡したのは北朝鮮国籍の一男性」にすぎず、さらに「殺害されたのではなく、単なるショック死だ」と主張し始めたことにある。

2月19日付け本コラム「金正男殺害を中国はどう受け止めたか――中国政府関係者を直撃取材」で述べたように、中国は、2月16日の昼のニュースまでは、「金という姓の朝鮮籍男性」としか報道していなかったが、16日午後からは「金正男」とフルネームで報道するようになった。

というのも、2月16日にマレーシアのザヒド副首相が、詳細な情報は警察当局から発表されるだろうとしながらも、「パスポートやDNA鑑定などにより、殺害されたのは金正男である判断される」と発表したからだ。

そのため、たとえば2月16日23:07の中国国営の中央テレビ局CCTV13(新聞チャンネル)は「クアラルンプールで死亡した朝鮮籍男性:マレーシア副総理が金正男と確認」というニュースを流した。つまり、「金正男」の名前をフルネームで言い始めたのだ。

ところが2月20日、駐マレーシアの北朝鮮大使が「死亡した男性が金正男というのは、いかなる根拠もない」と宣言したことを、中国政府の通信社である新華社が発表してからは、中国政府系列の報道では一斉に「金正男」という名前を使わなくなっている。

たとえば、2月26日の人民網(中国共産党機関紙「人民日報」の電子版)では、「朝鮮籍男性クアラルンプール死亡事件:マレーシア警察が朝鮮籍男性殺害事件と関係するマンションを捜査」などと、「金正男」という具体名を書かず、「朝鮮籍男性」に戻している。それでいながら、「死亡」とは書かずに「遇害」(殺害)という文字を、「うっかり(?)」使ってしまっていることは興味深い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国1月製造業PMIが50割れ、非製造業は22年1

ワールド

米政府機関の一部が短期間閉鎖へ、予算案の下院採決持

ワールド

トランプ氏、労働統計局長にベテランエコノミスト指名

ワールド

焦点:トランプ政権、気候変動の「人為的要因」削除 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 2
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 7
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 8
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中