最新記事

アメリカ政治

「反米」のレッテル貼るトランプ口撃、企業はツイートに恐々

2017年1月14日(土)09時37分

1月10日、トランプ次期米大統領(写真)がツイッターで「反米的」な行動を採る企業を次々と批判している。企業側はトランプ氏による「口撃」の標的にされないよう、人員削減や製造拠点の海外移転を取りやめるなど、対策に乗り出した。写真はニュージャージー州で昨年10月撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

 トランプ次期米大統領がツイッターで「反米的」な行動を採る企業を次々と批判している。企業側はトランプ氏による「口撃」の標的にされないよう、人員削減や製造拠点の海外移転を取りやめるなど、対策に乗り出した。

 トランプ氏は12月、「企業がわが国を離れて外国に行ったり、従業員を解雇したり、外国に新工場を建てておいて、その製品を米国で売っても報いを受けないと思っているなら、とんだ間違いだ」とツイッターに投稿した。

 トランプ氏は「アメリカ第一」を掲げて選挙戦を闘い、経済が停滞している地域に製造業の雇用を取り戻すと約束した。

 複数のトップバンカーによると、企業の中には「非国民」のレッテルを貼られるのを恐れ、大幅な人員削減につながる買収計画を棚上げしたり、生産拠点や課税上の居住地の移転を控えるところが出てきている。

 バミューダを拠点とする保険会社、マウンテンズ・インシュランス・グループは、税率の低い外国に本拠を移す「インバージョン」を目的に身売り交渉を進めていた。しかし3人の関係筋によると、11月の大統領選後に「反米」視されるとの懸念などから計画を打ち切った。

 大統領選以来、他にも同様の保険関連の案件が少なくとも2件、空中分解したという。

 トランプ氏が中国への敵対姿勢を示していることも、一部の企業に計画を思いとどまらせている。

 ウエアラブル端末のフィットビットのジェームズ・パーク最高経営責任者(CEO)は、中国に大規模な製造拠点を持つ企業は、自社を含めてすべて緊急時対応計画を策定するだろうと見ている。

ツイッターを注視

 複数の企業CEOや企業顧問によると、企業はツイッターのモニター体制を強化するとともに、自社が批判された場合の対応に備えて広報(PR)専門企業との契約にも動いている。

 防衛関連事業を請け負うある米大手企業の最高幹部は、「取締役会からは12月の時点で『彼に攻撃された場合の対策は整っているか?』と聞かれていた。今は、PR企業と契約しているか、ツイッターのモニター要員はいるか、と聞いてくる」と話す。

 この幹部は、トランプ氏と「応戦せず、直ちに折れる構えだ。身を低くしてレーダーに映らないようにしている」と打ち明けた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中