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朴大統領の人事介入から口裂け女まで 検閲だらけの韓国映画界

2016年11月24日(木)11時50分
杉本あずみ

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韓国等級委員会が今月3日から30日まで実施している「正しい映画のための等級分類キャンペーン」のポスター。「約束するよ、評価を確認!」を合い言葉にCJ CGV、ロッテシネマ、メガボックスの3大シネコンと共同で子供、若者が年齢に合った映画を選択できるように啓蒙している。

 では、日本映画を含む外国映画と韓国映画では違いはあるのだろうか。もちろん、ある。まず、等級審議の申請料金から大きな違いがある。申請料金は10分間幾らの計算で映画の全ランニングタイムによって決められる。韓国映画の場合10分間7万ウォン(約6,600円)に対し、外国映画は12万ウォン。一般的な商業映画120分を申請した場合、韓国映画84万ウォン。外国映画は144万ウォンと、60万ウォンもの価格の差が出てしまう。日本の場合では、レーティングを決める機関「映画倫理委員会」の審査料は1分当たり2740円としている。120分映画を審査した場合、32万8800円と韓国よりも高額だが、国内外の映画は関係なく一律同じ値段だ。

 また、しばしば問題視されるのが韓国映画にはレーティングが緩く寛大になっているのではないかという点である。12歳以上観覧可能と15歳以上観覧可能の等級がついた場合、韓国では保護者が一緒なら12歳・15歳未満でもその映画を見ることができる。韓国映画で特に歴史物などは戦争や戦いのシーンが入っていることが多く、血しぶきが飛んだり人が豪快に刺されて殺されるシーンが映し出される。しかし、等級委員会が15歳などの等級をつけた場合は、保護者と映画館に来た幼い子供もその映画を見ることができてしまい、結果的に残酷描写を見せてしまい、公開後憤慨した子供の保護者がよくネットなどで話題にしている。

 もちろん機械が決めるわけでなく、実際に人間が映画を見て、それぞれの感覚で決定し判断を下しているため、仕方が無いとはいえ、ばらつきがあるのは事実である。様々な問題があるにせよ、料金設定などをみると初めから韓国の国内映画産業を守るという点では大きな役割を担う機関なのだろう。今後も映画界の質を高めて、ひいては良質な韓国映画を国内外に提供することを支えていく一助となるよう期待したい。

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