最新記事

映画

朴大統領の人事介入から口裂け女まで 検閲だらけの韓国映画界

2016年11月24日(木)11時50分
杉本あずみ

 ちなみに、映画に関して言えば、作品内容のみならず、映画のポスターや予告編なども細かくチェックされ、委員会から許可が出たもののみが世に出すことを許されるのである。

 私が韓国の映画配給会社でバイヤーとして買い付けた日本映画「口裂け女」は、その名のとおりホラー映画だったので、ポスターも日本のオリジナルデザインをそのまま生かして審査提出したが、3回ものやり直しを要求された。

「口裂け女が持っている包丁が大きすぎるので小さくするように!」
「刃物の血がグロテスクなので茶色に変更!」

など細かな修正後、最終的にはタイトルの「口裂け」にダメ出しが出されてしまった。社内で緊急会議を行った結果「名古屋殺人事件」にせざる終えなかった。裂けた口の写真は、「子供が見ると怖がってしまうためマスクをつけなさい」という委員会の判断で使えず、タイトルもサスペンス殺人事件映画のようになってしまい、結局何の映画なのか分からなくなってしまった。

cleardot.gif口裂け女cleardot.gif나고야 살인사건

日本の『口裂け女』オリジナル版とその韓国公開タイトル『나고야 살인사건(名古屋殺人事件)』のポスター
等級委員会からの指摘に合わせるうちに、口裂け女も迫力がなくなり風邪をひいたOLのような感じに......

 このように、製作者やバイヤーが意図した方向に上手く進まない作品は少なくない。レーティングが下がり若者に見てもらえれば、それだけ観客動員数も上がる。しかし、だからと言ってグロテスクな描写やホラー要素をカットしてしまうと、子供だましのような味気ない作品となってしまうだろう。映画人らはギリギリの線で勝負したいと考えている。委員会のダメ出しと日々戦いながら映画公開を行っているのである。

 さて、そもそも政府機関「韓国等級委員会」は一体どんな人たちがレーティングを決めているのだろう。公式サイトによると委員の年齢は30〜60代まで。任期は1〜3年で職業も映画監督や映画学科教授、翻訳家、音楽プロデューサーまで様々な人が在籍している。彼らが数人1グループになり公開前の全ての映画をチェックしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

AI端半導体「ブラックウェル」対中販売、技術進化な

ワールド

チェイニー元米副大統領が死去、84歳 イラク侵攻主

ビジネス

リーブス英財務相、広範な増税示唆 緊縮財政は回避へ

ワールド

プーチン氏、レアアース採掘計画と中朝国境の物流施設
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中