最新記事

英EU離脱

英EU離脱でビジネスの表舞台から転落? メイ首相が企業懸念払しょくへ

2016年11月22日(火)10時15分

 11月21日、メイ英首相は、企業のブレグジット後への懸念に理解を示した。ロンドンで同日撮影(2016年 ロイター/Stefan Wermuth)

メイ英首相は21日、欧州連合(EU)から離脱(ブレグジット)した後の英国は、先の見えない通商条件に向けて「崖っぷち」から転げ落ちるのではないかという企業の懸念を払しょくすべく、離脱交渉の中で対処すると約束した。

EUと何らかの暫定的な合意を結ぶことで、2年間の正式な離脱交渉が終了した後も、新たな通商関係を構築する時間的猶予を確保する可能性を強く示唆するものだ。

メイ首相は英産業連盟(CBI)の幹部との会合で語った。首相はEU基本条約(リスボン条約)第50条の発動前に離脱交渉の内容を明かすつもりはなく、「正当な」条件の確保を脅かすような事態は決して望んでいないことを、企業幹部が他の誰よりも理解すべきだと述べた。

企業にとっての移行条件について質問されたメイ首相は「英国にとって、そして英国企業にとって最善の合意にしたい」と強調。「取り組むべき問題が出てくることは認識している。国民は崖っぷちではなく、先行きについて、ある程度明確に知りたいと願っていることも知っている。そのことは離脱交渉の中で対応していく」と述べた。

首相の報道官は後に「離脱交渉を準備する中で、広範囲に渡る問題について、英国にとって最善な条件は何かという点に焦点に当てて取り組んでいる」とした。

メイ首相の発言はCBIのポール・ドレクスラー会長が、英国とEU単一市場との今後の関係や、「欧州の優秀な人材」への移民規則適用について、透明性が必要と主張したことへの直接的回答と受け取れる。

ドレクスラー会長は「2年間の交渉期間が終了した後のブレグジット初日はどうなるのか。企業は通商条件が一夜にして様変わりするという崖っぷちのシナリオを必然的に思い描いている」と指摘。「そうなれば、企業は無法地帯に置き去りにされかねない」とした。

欧州連合(EU)離脱が決まった6月の国民投票後の直後に就任したメイ首相は、国民の意思であるブレグジットを実現すると明言してきた。ただし、EUとの将来関係についてどう考えているのか、詳細にはほとんど言及したことがない。



[ロンドン 21日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ銀、28年にROE13%超目標 中期経営計画

ビジネス

米建設支出、8月は前月比0.2%増 7月から予想外

ビジネス

カナダCPI、10月は前年比+2.2%に鈍化 ガソ

ワールド

EU、ウクライナ支援で3案提示 欧州委員長「組み合
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中