最新記事

中国

中国機内誌が差別的記述、撤回しても消せない傍若無人ぶり

2016年9月23日(金)10時20分
デービッド・ボロズコ

Paul Hackett-REUTERS

<国有航空会社の機内誌に掲載されたロンドンの旅行案内が露呈した中国の無神経な人種意識。中国人観光客の「爆買い」やマナーの悪さが反感を招いている一面もある>(写真はロンドンの中国人観光客)

「ロンドンは旅行者にとって比較的安全な都市だが、インド人、パキスタン人、黒人が多く住む地区に入る場合は注意が必要」――中国国有の中国国際航空の機内誌「中国之翼」9月号に掲載されたこんな文章が波紋を巻き起こしている。

 アジア系住民が多く住むロンドンのイーリング・サウソール地区選出のビレンドラ・シャルマ議員は、「多文化・多人種社会で平和的に暮らしている人々をおとしめる」記述だと怒り、中国国際航空に機内誌の配布差し止めを求めた。

 インド系、パキスタン系が多く住むトゥーティング地区選出のロセナ・アリンカーン議員は駐英中国大使に抗議の書簡を送り、「あなたはこんな考えではないと信じる」とクギを刺した。

 中国当局の対応は迅速だった。外務省の華春瑩(ホア・チュンイン)報道官は今月初めの記者会見でこの問題を取り上げ、「あらゆる民族集団の平等を支持し、あらゆる形の人種差別に反対する」と述べた。

「関係当局が中国国際航空と必要な話し合いを行う予定で、同社は調査を実施し、適切な処置を取るものと確信している」

【参考記事】中国獄中で忘れられるアメリカ人

 中国国際航空はすぐに問題の機内誌を回収。「多様な文化と慣行の尊重」を今後も守り抜くと謝罪した。

 これで一件落着と思いきや、続きがあった。中国共産党機関紙人民日報系のタブロイド紙、環球時報が機内誌の記述を擁護する論説を掲載したのだ。

「英司法省が14年に発表した報告書は、人口に対する逮捕率が最も高いのは黒人と混血だと認めている」と、この記事は指摘。ただし、欧米には「社会病理を人種の視点から論じてはならないという不文律」があるため、こうした実態は大っぴらには語られないと論じた。

ブランド物を買いあさる

 この論説の執筆者は、英司法省の報告書を最後まで読んでいないらしい。イギリスでは黒人と混血の逮捕率が高いのは事実だが、インド系とパキスタン系(報告書では「アジア系」に分類されている)の逮捕率は、「中国系その他」に分類された人々とほぼ同じだ。しかも、報告書は人種的な憎悪による犯罪の83%は白人によるものだと指摘している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

8月米卸売在庫横ばい、自動車などの耐久財が増加

ビジネス

10月米CPI発表取りやめ、11月分は12月18日

ビジネス

ミランFRB理事、12月に0.25%利下げ支持 ぎ

ワールド

欧州委、イタリアの買収規制に懸念表明 EU法違反の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 3
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体制で世界の海洋秩序を塗り替えられる?
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 7
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中