最新記事

ベネズエラ

神父からインディオスまで ベネズエラ9.1大規模デモの参加者たち

2016年9月16日(金)06時20分
野田 香奈子


カラカスへの入り口封鎖

 当日の朝は、デモに参加するために多くの人がカラカスの外からも集まりました。そのため、当局はカラカスに入る道路が次々と封鎖し、抗議に向かう人々が軍などにより足止めをくらいました。それでも、最終的には多くの人が封鎖を乗り越え、徒歩でカラカス入りしました。


 結果的に、これだけの規模のデモにも関わらず、懸念されていた暴力的な衝突や弾圧は見られませんでした

 特に懸念された政府に連なるバイカーのギャング(コレクティボス)の姿も、カラカスでは一切見られませんでした(ただし地方都市マラカイ「だけ」で、なぜかコレクティボスが街を襲撃、デモ参加者に対する攻撃のみならず、町中を荒して回りました。マラカイだけ、というのも奇妙な話です。つまりマラカイ以外では今回はコレクティボスは出動しない、弾圧は行わないという誰かの判断がどこかであったと考えるべきかと思います)。

 一部、衝突があったことは伝えられる通りですが、それでもなお、全体的に見れば今回は当初の予想に大きく反してすべてが平和的に進んだと言えます。


政府派カウンターデモと政府による情報操作

 政府側のカウターデモはかなりお粗末な状態でした。デモ参加者の正確な数字はわかりません。ですが、圧倒的な数の反政府デモに対して、政府派のカウンターデモ参加者はかなり少なかったことは明らかです。


 この事実を隠すため、政府高官のディオスダド・カベジョは2012年にロイターによって撮影されたデモの写真をこの9月1日のものだとしてツイッターで拡散していました。

 ですが9月1日のデモの様子や街の様子は、あらゆる場所、あらゆるアングルからSNSにアップされました。これほど多数の人が携帯で写真やビデオを撮影し、SNSでシェアし、それがあっというまに拡散する今日、数をごまかして発表することはできても、見た目の印象からくる数の違いをごまかすことは困難です。

 

まさかのバイロテラピア復活

 また政府支持者のカウンターデモの現場では、バイロテラピアを行う政府支持者の姿が目撃されました。


 バイロテラピアとはラテンのステップにエアロビクスを混ぜた、一時期南米で大流行したエクササイズの一種です。実はこれと反政府デモの間には深い因縁があります。

 2002年から2003年にかけてまだチャベス人気が上昇中で野党連合MUDも存在せず、反政府がダメダメだった頃のこと。デモの期間が長引くにつれ、野党派の負けは明らかで、デモは盛り上がりに欠けていました。そこで慌てたデモ主催者は、参加者のモチベーション低下を防ぎ、手持ち無沙汰を解消するためデモの会場でバイロテラピアを始めたのです。バイロテラピアは、言わば野党派のダメなデモの象徴でした。

 それを今回、カウンターデモの現場で政府支持者がやっていたのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:メダリストも導入、広がる糖尿病用血糖モニ

ビジネス

アングル:中国で安売り店が躍進、近づく「日本型デフ

ビジネス

NY外為市場=ユーロ/ドル、週間で2カ月ぶり大幅安

ワールド

仏大統領「深刻な局面」と警告、総選挙で極右勝利なら
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「珍しい」とされる理由

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆発...死者60人以上の攻撃「映像」ウクライナ公開

  • 4

    米モデル、娘との水着ツーショット写真が「性的すぎ…

  • 5

    メーガン妃「ご愛用ブランド」がイギリス王室で愛さ…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 8

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 6

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 9

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中