最新記事

モンゴル

モンゴル、経済危機で通貨急落 米ドルや人民元求める市民が闇市場に殺到

2016年8月25日(木)09時32分

8月24日、厳しい経済危機に見舞われているモンゴルでは、通貨ツグリクの下落に歯止めが掛からない。写真は都内で2010年9月撮影(2016年 ロイター/Yuriko Nakao)

 厳しい経済危機に見舞われているモンゴルでは、通貨ツグリクの下落に歯止めが掛からない。パニックを起こしたモンゴル市民はブラックマーケットの米ドルや人民元に殺到、外貨不足が日に日に深刻化している。

 両替商のガンボルドさんは「ドルはもうないよ」と話す。ガンボルドさんは1990年のコミュニズム崩壊以来、両替商を営んでいるが、これまでは外貨が足りなくなると、仲間内で融通できていたという。

 それが今では、ドルが海外から届くまでは、店を閉めるしかない。

 モンゴルは、海外からの投資急減、持続不可能な拡張的財政政策、石炭や銅などコモディティーへの需要減退を受け、苦境に陥っている。

 中銀は先週、通貨安に対応すべく、政策金利を450ベーシスポイント(bp)引き上げて過去最高の15%とした。ツグリクは8月初めから対ドルで9%下落し、下落率は世界の通貨の中でも突出している。

 ドル供給が細るなかで、商業銀行は通貨取引を厳しく制限。ガンボルドさんによると、ある銀行はドルとの交換を拒否しているという。

 チョイジルスレン財務相は今月、中銀の外貨準備残高は13億ドル、と述べた。ただし、中国との150億元の通貨スワップ協定を勘案しなければ、外貨準備は4600万ドルのマイナスとの見方を示した。

 国際通貨基金(IMF)は先週、モンゴルを訪問し、政府関係者と面会した。ただ、一部のアナリストは、モンゴルはIMFではなく、中国との通貨スワップ協定拡充に救いを求めることになると見ている。

 BD証券(ウランバートル)のニック・クーシュン最高執行責任者(COO)は「中国が域内に持つ影響力を生かして、IMFよりも大規模、かつより良い救済策を申し出る可能性が高い」と話す。「モンゴルは天然資源が豊富で、ロシアとの経済コリドーとしての潜在性を持つ。中国にとっては、戦略的に重要な意味がある」との見方を示している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ヴァージン・オーストラリアが再上場、IPOで4.3

ワールド

アングル:トランプ減税法案、採決入り難航 共和党内

ワールド

EU、イスラエルによる人権侵害疑惑への対応で意見分

ワールド

米トランプ氏企業、金融街の高層ビル債務完済 財務改
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 8
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 9
    「水面付近に大群」「1匹でもパニックなのに...」カ…
  • 10
    イスラエル・イラン紛争はロシアの影響力凋落の第一…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中