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実情と乖離した日本の「共産主義礼賛」中国研究の破綻

2016年8月23日(火)16時10分
楊海英(本誌コラムニスト)

 打算的で、利益優先の中国研究をイデオロギー面で支えているのは、日本独特の左翼思想とマルクス主義的精神文化だ。19世紀末の明治維新の直後からどの国よりも多数のマルクスやレーニンの著作を翻訳した日本には、ソ連と中国以上に強い共産主義礼賛の伝統がある。共産主義の危険な思想を広げる運動家やアナーキストでさえも、「象牙の塔」に守られてきた。

 彼らの弟子たちはずっと、日本の有名大学の主要なポストを独占することができた。彼らにとって、ソ連が崩壊した後は唯一、中国だけが「憧憬の地」であり続けてきた。

「理想の共産主義国家」には労働者問題はあってはいけないし、人権弾圧の事実もあるはずはない。ましてやチベット人やウイグル人、モンゴル人が主張するような民族問題なども、「文明人と夷狄(いてき、野蛮人)」の対立という漢民族史観で中国を研究してきた日本の中国研究者は耳を貸さない。

【参考記事】中国政治の暑い夏と対日外交

 こうして中国の本質を知る中国人の研究を日本は無視してきた。だが先月には「日中友好」を献身的に支えてきた日中青年交流協会の鈴木英司理事長がスパイ容疑で中国当局に拘束された。日本人だけではない。日本の大学に勤めながらも、常に北京当局を擁護する発言を繰り返し、中国政府の代弁役を演じてきた人物も昨年までに、複数名拘束される事件が発生している。

 むやみに中国を称賛せずに現実のわが国を見よ、と習政権がメッセージを送っている――そんなわけはあるまいが、純朴な日本人はまだ夢から覚醒していないところが悲しい。

[2016年8月23日号掲載]

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