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尖閣沖、中国の狙い ── 南シナ海に学び東シナ海でも強硬路線

2016年8月10日(水)12時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

「判決がボタンを押した」としているが、実はその前から「強硬路線」は決議されていたとみなしていいだろう。

 だから2013年初頭にフィリピンによる仲裁裁判所への提訴を受けてからは、むしろ逆に次々と南シナ海に人工島を建設し、判決後はさらに強硬路線を貫き通した。

 その背後には、習近平国家主席の指示があったと、香港の「明報」が報道している。

中共中央政治局会議で習近平が「行動を起こせ」

 8月4日、香港の「明報」は、習近平国家主席がハーグの仲裁裁判所の判決が出る前に開かれた中共中央政治局会議で、「まず行動を起こせ! あとで言っても何にもならない」という趣旨の指示を出していたと報道している。

 それによれば、習主席は「南海問題に関して、もし今われわれが行動を起こさなかったとしたら、あとに残るのは歴史資料の束だけで、何を言っても役に立たない。いま行動を起こしてこそ、論争状態が保たれる」と述べたという。

 さらに中共中央政治局会議のあとに、「本当の大国は問題があることを恐れない。むしろ問題があるからこそ、(それを逆利用して)そこから利益を得ることができるのだ」と述べていた。

 明報は論拠として「中国南海網(ウェブサイト)が開通したので」としているが、実際に「中国南海網」にアクセスしても、そのようなことが書いてあるわけではない。

 また明報には「一部の資料を初めて公開した」とあるので、「国家海洋局」の中の「【新華社】中国南海網正式開通 一部の資料を初公開」という項目にアクセスしてみたところ、そのようなことには全く触れていなかった。古い歴史の資料の一部を開示したに過ぎない。

 ところが「明報」には、「中国南海網が開通した→一部の資料を初公開→中共中央政治局会議で習近平が発言」とあるので、まるで「中国南海網が開通して、それまで明らかにしなかった中共中央政治局会議における習近平の発言を初めて公開した」と読めるような書き方になっている。

 事実、日本の一部のメディアでは、そのように誤読して報道しているものがある。

 実際に早くから公表されている中共中央政治局会議の内容を見てみると、2016年1月29日が全人代に関してで、2月22日が全人代で発表する「政府活動報告」と「第十三次五カ年計画」文案の最終チェックである。この会議は習近平国家主席が招集し、習自身がチェックしている(ちなみに、李克強首相が勝手に書いたような報道の全ては流言飛語以外の何ものでもない)。

 次は5月27日で、ここでは城鎮化問題に関して討議している。その次は判決が出た後の7月26日で、ここでは今年10月に北京で開く中共中央六中全会や今年下半期の経済政策などに関して討議され、その後、北戴河の会議へとなだれ込んでいるので、明報が報道しているような内容は載ってない。

 ただ、明報を非常に注意深く読むと、「北京の消息筋によれば」という文言があるので、「漏れ伝わったところによれば」というのが、最大の根拠だろう。

 そうであるならば、筆者もまさに「北京の、ある消息筋」から、同様のことを聞いている。但し、習近平が軍事的指示を出したのは、中共中央政治局会議ではなく、あくまでも中央軍事委員会会議においてである。

 それらの一部は本コラムですでに紹介してきた中央軍事委員会会議による決議と声明発表などだ。

 情報は根拠が正確でないと、正しく有用な分析はできない。

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