最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

ナイスガイだがスター性なし、副大統領候補ケーンのプラスマイナス

2016年7月23日(土)11時20分
渡辺由佳里(エッセイスト)

Carlos Barria-REUTERS

<民主党大会開催を前に、ヒラリー・クリントンは副大統領候補として元バージニア州知事で民主党上院議員のティム・ケーンを選出した。政治家としての実務経験は豊富で人柄にも問題はないナイスガイだが、無党派層を取り込めるようなスター性は持っていない>

 週明け25日からの民主党大会を目前にして、ヒラリー・クリントンが副大統領候補を発表した。

 今週開催された共和党大会によるトランプのPR効果の鎮静化を狙うタイミングだ。

 副大統領候補の最終選択肢として数カ月前から数人の名前が上がっていたが、バーニー・サンダースやエリザベス・ウォーレンなどの名前は途中で消えていった。新しい名前が浮上するなかで、最後まで有力視されていたのがこのティム・ケーンだった。

【参考記事】異例尽くしの共和党大会で見えた、「トランプ現象」の終焉

 民主党をよく知る人には馴染みがある人物だが、一般的な知名度はそれ程高くない。

 ハーバードロースクールを修了後、バージニア州リッチモンド市の市議会から政治家としてのキャリアをスタートし、2006年からの4年間はバージニア州知事を務め、2008年の大統領選ではオバマの副大統領候補として最後まで残った。選挙後にハワード・ディーンの後を継いで民主党全国委員長を2年務め、2012年からはバージニア州選出の上院議員を務めている。

 政治家のキャリアが長いにもかかわらず、同僚から好かれ、敵が少ない「ナイスガイ」としても知られている。だが、カリスマ性とも言える強い癖もなく、自ら「私は退屈な人間です」と冗談を言うほど印象は強くない。

 ヒラリーがケーンを副大統領候補に選ぶ利点は次のようなものだ。

1)州知事の経験がある
2)現実主義者で対人関係能力が高い
3)上院外交委員会の委員として外交面での深い知識と経験を持つ
4)民主党と共和党の力が拮抗する「紫の州」が地元
5)カトリック信者で、若いときにホンジュラスで奉仕活動をしたことがある
6)スペイン語が流暢

 1)、2)、3)は、肩書きだけでなく実際に役立つ副大統領の条件を満たしている。外交面では穏健派で、タカ派のイメージが強いヒラリーの中和剤の役割も果たせる。万が一、大統領になった場合にも、無事に責務を果たすことができるだろう。

 4)については、アメリカの大統領選挙のルールでは、最初から結果がわかっている州よりも民主党(青)か共和党(赤)のどちらになるかわからない紫の州(あるいはどちらに揺れるか不明な「スイング・ステート」)という意味で重要だ。バージニアは勝敗を決めるほどの規模ではないが、そこをおさえることに意義がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、中国製半導体に関税導入へ 27年6月適用開始=

ビジネス

米耐久財受注、10月は2.2%減に反転 コア資本財

ワールド

米当局、中国DJIなど外国製ドローンの新規承認禁止

ビジネス

米GDP、第3四半期速報値は4.3%増 予想上回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    砂浜に被害者の持ち物が...ユダヤ教の祝祭を血で染め…
  • 6
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 7
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 8
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中