最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

トランプ夫人のスピーチ盗用疑惑も 異常事態続出の共和党大会

2016年7月20日(水)12時10分
渡辺由佳里(エッセイスト)

Mark Kauziarich-REUTERS

<開催中の共和党大会でトランプは大統領選の代表候補として正式に指名された。しかし今回の党大会は、共和党の歴代大統領や代表候補、党指導部らが軒並み出席を拒否する異常事態。さらにトランプ夫人のスピーチ「盗用疑惑」まで飛び出した>(写真は大会初日に登場したトランプ〔左〕とメラニア夫人〔左〕)

 今週18日からオハイオ州クリーブランドで始まった共和党大会は、前代未聞の事態に陥っている。

 通常の共和党大会なら、歴代の大統領と指名候補、党指導部、最終的に指名候補の支持を表明した予備選のライバルが出席し、候補を讃える演説を行って盛り上げる。

 ところが、今年の党大会では、2人のブッシュ大統領(41代と43代どちらも)、2008年の指名候補ジョン・マケイン、2012年の指名候補ミット・ロムニー、といった重鎮が次々と欠席を表明した。予備選でライバルだったジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事、リンゼー・グラム上院議員、オハイオ州知事ジョン・ケイシックらは出席を拒否しただけでなく、トランプの支持も拒んでいる。

 共和党大会の開催地であるオハイオ州の知事は、会場警備などの裏の仕事も引き受けなければならない。その大役を務める州知事のケイシックが大会そのものに欠席するのだから、異常事態と言えるだろう。

【参考記事】トランプはなぜ宗教保守派のペンスを選んだのか

 最近、ベテラン政治コンサルタントのポール・マナフォートを選対本部長として登用したトランプは、自分の直感だけを信じて動いた予備選から伝統的な大統領選への切り替えを、少なくとも考慮していると見られる。自己流を押し通してきたトランプと、エスタブリッシュメントを代表するようなマナフォートがどのような党大会を作るのかが注目されていた。

 その党大会は初日から大荒れとなった。

 トランプが代議員の過半数を獲得したアイオワ、ワシントン、ミネソタ、コロラド、メイン、ユタ、バージニア、ワイオミング、ワシントンDCの9つの州が、声で可決する方法ではなく、代議員が自分の良心に従って投票(点呼)できる特殊なルールを使う嘆願書を出したのだ。だが採決の際に、ルール委員会の共同委員長がその嘆願を無視したため、会場に「call the roll(点呼せよ)!」という抗議のチャントが広まった。この抗議も結局は却下され、再び反発の声が湧き上がった。コロラド州の代議員団は多くのメンバーが抗議のために会場を退去した。

 反トランプのグループは、トランプ指名を阻止することはできなかったが、「共和党はトランプ支持で団結していない」というイメージを全米に伝えることには成功した。

 そんな揉め事があった初日のハイライトは、メラニア・トランプ(トランプの3番目で現在の夫人)のスピーチだった。メラニアはスロベニア出身の 元モデルであり政治家ではない。大衆の前での演説は初めてで、しかも英語は母語ではない。それなのに、プロでも緊張する大舞台を落ち着いた態度でこなしたメラニアへの評価は当初高かった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中