最新記事

情報セキュリティ

企業幹部になりすまして金をだまし取る、新手のメール詐欺にご用心

2016年6月15日(水)17時15分
ジョッシュ・ソール

tiero-iStock.

<数十億ドルの被害が出ているビジネスメール詐欺(BEC)は、いわば「偽の指示メール」型サイバー犯罪。ここ数年間に世界100カ国で被害が報告され、その件数はすさまじい勢いで増加している>

 ある企業の経理担当者にCEOからメールが届いた。「社員全員の源泉徴収票を送ってくれ」と言うのだ。真面目な経理担当者は、言われたとおりに書類を用意し、CEOにメールで送り返した。しかし、実は最初のメールを書いたのはCEO本人ではなく、メールアカウントを乗っ取ったハッカーだった――。

 これが「ビジネスメール詐欺(Business E-mail Compromise=BEC)」と呼ばれる新手のサイバー犯罪だ。いわば「偽の指示メール」。ここ数年で数十億ドルもの被害が出ている。

「この連中は隙さえあればつけこんでくる」と、FBIのミッチェル・トンプソン捜査官は14日、ニューヨーク市で開かれたサイバー犯罪の懇談会で語った。「セキュリティの脆弱なところを見逃さない」

【参考記事】サイバー犯罪に取り組むインターポールを訪ねて

 冒頭で紹介したCEOへのなりすまし――初めて確認されたのは2016年4月の確定申告時期の直前だった――以外にも、BECにはいくつか種類がある。ハッカーたちは個人の情報を盗み、それをほかの犯罪者に売ったり、クレジットカードや税金還付詐欺に利用したりする。

 他にも、ハッキングで経営幹部になりすまし、財務担当者にメールしてすぐに送金するよう指示する詐欺もある。たいてい送金先は中国か香港の銀行だ。「ニューヨークだけで9000万ドルの被害があった」と、FBIのトンプソンは言う。被害企業がどれだけ早く犯行に気付くかによって「お金を取り戻せる場合と、取り戻せない場合がある」。

 FBIによれば、2013年後半~2016年5月にBECでハッカーに盗まれた、あるいは未遂に終わった事件の総額は世界で30億ドルを超える。米国内外の被害企業から2万2000件以上の事例が報告されている。未遂に終わった事件も含めると、アメリカの全50州、世界の約100カ国でBEC犯罪が起きていて、2015年1月以降で1300%も増加している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

半導体への関税率、EUに「劣後しないこと」を今回の

ワールド

米政権、ハーバード大の特許権没収も 義務違反と主張

ビジネス

中国CPI、7月は前年比横ばい PPI予想より大幅

ワールド

米ロ首脳、15日にアラスカで会談 ウクライナ戦争終
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 2
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段の前に立つ女性が取った「驚きの行動」にSNSでは称賛の嵐
  • 3
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中印のジェネリック潰し
  • 4
    伝説的バンドKISSのジーン・シモンズ...75歳の彼の意…
  • 5
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    60代、70代でも性欲は衰えない!高齢者の性行為が長…
  • 9
    今を時めく「韓国エンタメ」、その未来は実は暗い...…
  • 10
    「靴を脱いでください」と言われ続けて100億足...ア…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 10
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 10
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中