<世論調査でついにヒラリーに逆転したトランプ。偏見の塊のようなこの人物をアメリカの大統領にさせれば、取り返しのつかない惨事となる>

 ドナルド・トランプがついに支持率でヒラリー・クリントンより優位に立った。FOXニュースが先週発表した世論調査では、大統領選本選で2人が対決した場合、トランプの支持率は45%、クリントンは42%。先月の同調査ではクリントンが7ポイント差でリードしていたから、トランプはわずか1カ月で大逆転を果たしたことになる。

 ソーシャルメディアではさまざまなコメントが飛び交っている。いわく、「たった1回の調査結果で大騒ぎすることはない」(確かに)。「民主党幹部はすぐパニックになる」(そのとおり)。「選挙戦はこれからまだ何カ月も続く」(うんざりだが、そのとおりだ)。

 トランプは共和党の指名を事実上獲得済みだ。ヒラリーは執拗に食い下がるバーニー・サンダースに手を焼いているが、民主党の指名はほぼ確実で、指名後は支持率が上がるだろう。

 長い選挙戦(それも展開の読めないキワモノ芝居と化した選挙戦)の中のたった1回の世論調査で何が分かるというのか。

 答えは「何も」。今回の調査結果はトランプの支持拡大をあらためて印象付けただけ。出生疑惑でオバマ降ろしを図ったおバカなセレブが事実上の指名候補にのし上がり、前国務長官を脅かすほど支持率を伸ばしている。この不可解な状況に有権者はどう反応すべきか。答えはずばり「パニックになるべきだ」。

【参考記事】米共和党、トランプ降ろしの最終兵器

 偏見の塊がアメリカの大統領になろうとしているのだ。「冷静でいろ」と言うほうが無責任だろう。

「冷静でいろ」と言う人々が指摘するのは次の2点だ。第1に、トランプはそれほど危険な男ではない。過激なデマゴーグに見えるが、計算ずくで暴言を吐いているだけだ、と。

 百歩譲って人種差別やイスラム嫌い発言がトランプの本音ではないとしよう。だが人気取りのために自分の信条と異なる発言をする候補者を信用できるだろうか。これまでのトランプの戦いぶりを見れば、暴言がただの演出ではないのは明らかだ。女性蔑視はポーズではない。傍若無人なワンマンぶりも本性だ。

取り返しのつかない惨事

「冷静でいろ」派が指摘する第2の点は、トランプは本選では勝ち目が薄いということだ。

 いいだろう、トランプがクリントンを倒す確率は20%しかないとしよう。だが、それだけでもパニックになるには十分だ。

 想像してほしい。11月までにあなたの家族に恐ろしい災難が降り掛かる確率が20%あるとしたら? これから半年、あなたはのんきに暮らせるだろうか。

白人至上主義者でいいのか