最新記事

自動車

日産ゴーン、三菱に賭け世界販売1000万台狙う、実現には曲折も

インドネシアやタイではシェア、ブランド力で日産を上回る三菱自を格安で手中に

2016年5月22日(日)12時25分

5月22日、燃費偽装で窮地に陥った三菱自動車が、日産自動車のカルロス・ゴーン社長という救世主を得て再生に動き出す。提携の会見で握手するゴーン社長(左)と益子会長、横浜で12日撮影(2016年 ロイター/Thomas Peter)

 燃費偽装で窮地に陥った三菱自動車<7211.T>が、日産自動車<7201.T>のカルロス・ゴーン社長という救世主を得て再生に動き出す。ゴーン氏は三菱グループとの協力も視野に東南アジアでの拡販、電気自動車、プラグインハイブリッド車、部材の共同購買など多くの分野で相乗効果を期待する。

 しかし、不正を生んだ三菱自の改革の成否は未知数だ。三菱ブランドに賭け、世界販売1000万台の達成を狙うゴーン氏の決断には、なお多くの課題が待ち受ける。

災い転じて福となす

 今回は前向きに動いてくれて良かった――。日産による34%出資を知った三菱グループ役員らは、ゴーン氏が三菱自に強い関心を持つようになっていたことに驚き、安堵した。日産は2011年に三菱自との折半出資で軽自動車の企画開発の合弁会社を設立したが、過去の両社間のやりとりを考えると、本体への資本参加などありえないと思っていたからだ。

 2000年代前半、三菱自は2度にわたりリコール隠しを引き起こした。それを機に、当時の独ダイムラー・クライスラーは出資を引き上げ、三菱自は三菱重工業<7011.T>、三菱商事<8058.T>、三菱東京UFJ銀行(当時は東京三菱銀行)などが優先株を持つグループの管理下に置かれた。当時のゴーン氏には、グループから独り立ちできない三菱自を「心もとなく、手放しで安心できる相手と思えなかったのでは」と日産幹部は言う。

 事実、日産はリコール隠しで経営危機に見舞われた三菱自への支援を拒否する。「当時は三菱自をどこかの自動車メーカーに引き取ってもらおうというのが最終目標だった」と、三菱グループ企業のある幹部は話す。だが、各社に断られ、「最後の頼みは日産だったが、その時も出資するまでに至らなかった」と振り返る。

 「災い転じて福となす」。三菱自の燃費偽装問題が日産との資本提携に発展した経緯を、三菱商事のある幹部はこう表現する。三菱自は三菱ブランドを傷つける問題児だが、その経営が立ち行かなくなれば、商社ビジネスにとって、今後も拡大が期待できる自動車事業の重要な相手を失うことになりかねない。屋台骨だった資源事業が曲がり角を迎える中、商事には三菱自をつぶすにつぶせないという思いもあったという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコ裁判所、最大野党党首巡る判断見送り 10月に

ワールド

中国は戦時文書を「歪曲」、台湾に圧力と米国在台湾協

ビジネス

エヌビディアが独禁法違反、中国当局が指摘 調査継続

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中