最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

突如飛び出した共和党「反トランプ連合」の成算は?

2016年4月28日(木)17時20分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)

 そこで改めてクローズアップされてきたのが、インディアナ州だ。現時点での世論調査結果では、トランプが39.3%に対してクルーズが33.0%と差は僅かで、19.3%という支持率のケーシックの票を「移動」できれば、クルーズにも勝算がないわけではない。

 問題は、選挙協力の方法だ。完全な「2位・3位連合」を組むためには、文字通りの「一本化」をするのが常識的だろう。例えばインディアナの共和党員に対して、ケーシックは「私を支持する人はクルーズに入れてほしい」と訴える、あるいは陣営の組織を通じてそう徹底することが必要となる。

 クルーズは比較的これに近いメッセージを出している。オレゴンとニューメキシコの支持者に、ケーシックに入れるように呼び掛けている。だが一方のケーシックは、曖昧な姿勢を見せている。26日にNBC「トゥデイ」の電話インタビューに応じたケーシックは、以下のように発言している。

「これはリソース(資源)の問題だ。ここまで来たら効率が必要なので、私はインディアナには行かないし、クルーズはオレゴンとニューメキシコには来ない。それだけだ。私はインディアナではテレビ広告もやめる」

「トランプをとめるのが目的ではない。ヒラリー・クリントンをとめるのが目的で、トランプを党大会で勝たせたらヒラリーの勝利が確定してしまう。共和党としては、それは絶対に避けなければならない」

【参考記事】ヒラリー、トランプ圧勝でも予備選の混迷は続く


「しかし私は、インディアナの自分の支持者に、自分に入れるなとは言えない。私は大統領に立候補しているので、自分に入れるなということはあり得ない。第一、そんなことをしたら投票率が下がるじゃないか」

「混乱しているというのはメディアのあなた方だけじゃないのか。有権者は理解しているよ。分かる人には分かるんだ」

 こうなると「腹芸」というレベルの話で、インタビューをしていたキャスター達は、最後まで「理解できない」と困惑した顔をしていた。

 だがケーシックの発言を整理して、その意味合いを探るとしたら、次のようなことは言える。

 まず「自分に入れるな」というと投票率が下がるというのは、意外に本当なのかもしれない。穏健保守の中道票は、極端な保守主義のクルーズとは水と油だから、あくまで「作戦」に乗ってもらうには、自主的にしないと支持者がヘソを曲げて投票所に来ない可能性がある。そうなったらトランプ陣営を喜ばせるだけ、というのは冷静な認識としてあるのだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中