最新記事

2016米大統領選

米共和党ルビオ議員、大統領選撤退につながった戦略ミス

2016年3月21日(月)11時45分

 共和党活動家ジェイミー・ジョンソン氏は「彼には勝つチャンスがあったのに」と指摘し、「アイオワ州の住民は地元に来てもらうことを好む」と述べた。

夕食会に姿見せず

 ニューハンプシャー州の選挙キャンペーンでも、ルビオ氏が費やしたのは28日間のみ。ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事が費やしたほぼ半分、そしてニュージャージー州知事のクリス・クリスティ氏とオハイオ州知事のジョン・ケーシック氏の約70日間からは大差となった。

 ニューハンプシャー州の共和党有力者ファーガス・カレン氏は各候補者を招いたイベント開催を計画したが、ブッシュ氏やケーシック氏は承諾した一方、ルビオ氏は出席しなかった。同州の保守活動家ルネ・プラマー氏も、共和党候補者と地元の指導者を招いた夕食会を開いたが、ルビオ氏は参加しなかった。

深み欠くとの懸念

 ルビオ氏をめぐる別の問題は、既に慣れたテーマでしか議論を展開できないという見方だ。

 クリスティ氏はこれに気が付き、ニューハンプシャー州予備選の直前に、ルビオ氏がかねてから使ってきた文言を繰り返しているのをとらえ、暗記しているだけだなどと批判。ルビオ氏が深みに欠けているという一部有権者の見方は強まった。

 トランプ氏のメディア席巻はライバル候補者が注目を得ることを困難にしてきた。しかしトランプ氏による攻撃的な発言に対し、ルビオ氏は2月25日のテキサス州ヒューストンでの討論会以降、同じような攻撃的な発言で対応。これも有権者にとっては「誤った判断」と映った。ルビオ氏はその後、トランプ氏への個人攻撃を後悔していると述べた。

移民改革への関与

 ルビオ氏が抱えていた問題は2013年1月28日までさかのぼるとの見方もある。ルビオ氏はこの日、超党派の上院議員らと米連邦議会議事堂で移民改革法案について記者会見を行った。

「8人組」と呼ばれる超党派議員らがまとめたこの法案は、メキシコとの国境管理強化などを条件に、不法移民に米市民権獲得への道を開く内容だった。

 その後、法案は反発を受け、ルビオ氏も同法案から距離を置くと、ヒスパニック系団体は同氏が諦めたとして非難した。

 予備選でトランプ氏が不法移民の強制送還やメキシコ国境沿いでの壁設置を表明して多くの保守派を喜ばせる中、ルビオ氏の移民改革法案への関与とその後の遠ざかりは、選挙キャンペーンに影を落としてきた。

 ライバル候補者の支持者らも、移民改革に背を向けたルビオ氏の態度を攻撃材料に利用して、批判広告を展開した。

 (Steve Holland記者、James Oliphant記者 翻訳:本田ももこ 編集:加藤京子)

[マイアミ 15日 ロイター]

120x28 Reuters.gif
Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

ロイターネクスト:米第1四半期GDPは上方修正の可

ワールド

プーチン氏、5月に訪中 習氏と会談か 5期目大統領

ワールド

仏大統領、欧州防衛の強化求める 「滅亡のリスク」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中