最新記事

インタビュー

「ホームレス」を生み出さない社会を目指して

2016年2月25日(木)15時42分
WORKSIGHT

wsHomedoor_2.jpg

HUBchariで提供する自転車を修理するための講習も開催。技能に長けたホームレスの人が指導する。

 ②の入口封じというのはホームレス状態になりたくないと望んだら、ならずに済むようにするための生活支援です。具体的には食事や仮眠、洗濯などができるオープンスペース「アンドハウス」(大阪市北区)の運営、社会的孤立を抱えていたり就労意欲や自尊心が低下していたりする人を対象に、生活支援から就労支援までを提供するプログラム「CHANGE」、大阪市北区にてホームレス状態にある人々への夜回り活動を行う「ホムパト」がこれに当たります。

 ③の啓発活動はホームレスの人々への偏見をなくし、襲撃事件を根絶するための取り組みです。日本で最もホームレスの人々が多いといわれる釜ヶ崎(あいりん地区)とその周辺で、炊き出しへの参加やワークショップを通して日本の貧困問題を考える「釜Meets」、ホームレス・生活保護受給者への偏見を解消する中高大学生向けの講演やワークショップ、一般社団法人「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」の事務局運営などを手掛けています。

wsHomedoor_3.jpg

大阪市・梅田駅近くにあるアンドハウス。2階建てビルを借り上げ、ホームレスの人のニーズに応える機能を備えた。

どうしたら自尊心を傷つけることなくホームレスの人たちを手助けできるか

 私がホームレス問題に出会ったのは14歳のときです。中学時代、通学電車の窓からあいりん地区が見えて、ホームレスの人の多さに驚いたのが最初ですね。親や友人は「あのあたりは危ない」というけれども、その根拠のない思い込み、ホームレスの人々への偏見に違和感を感じました。

 実際のところどうなんだろうと炊き出しに参加して、こんなにも日本にホームレスの人がいたのかと、がく然としました。炊き出しの始まる3時間くらい前から300~400人の人がうつむきがちに行列をなしていて、広い公園をぐるりと1周するほど。そのとき配ったおにぎりは500~600個だったと思いますけど、あっという間になくなってしまった。

 それまで見たことのない異様な光景に圧倒されると同時に、何も考えず参加してしまった浅はかさを恥じる思いもありました。いいことをしているつもりで行ったけれども、ホームレスの方々にしたら孫のような年齢の私から命綱であるおにぎりを渡される、その悔しさやつらさにまで気が回りませんでした。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=続伸、S&Pが終値で最高値 グロース

ビジネス

再送-11月の米製造業生産は横ばい、自動車関連は減

ワールド

米最高裁、シカゴへの州兵派遣差し止め維持 政権の申

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、GDP好調でもFRB利下げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中