最新記事

中台関係

だから台湾人は中国人と間違えられたくない

2016年2月9日(火)16時25分
譚璐美(作家、慶應義塾大学文学部訪問教授)

 中国では、国務院台湾事務弁公室に「政党部」を新設して対話姿勢を打ち出し、1949年以来断絶していた国民党と共産党のトップ会談が実現した。今後は年2回のペースで定期的にトップ会談をするということも決定。

 トップ会談から7か月後の2008年12月には中台間に定期直航便が就航し、中国大陸から初めて台湾に観光客が訪れた。文化、芸術、メディア、その他各分野で幅広い交流が開始され、中国企業の台湾投資、台湾企業の中国投資も始まって、中台交流は怒涛の勢いで広がった。

 だが、世界中の大企業が鳴り物入りで対中投資に邁進する華やかな舞台の陰で、台湾企業に対する中国の対応は驚くべきものだった。

 当初は歓迎ムードの中で、中国は合弁事業を盛んに推奨し、台湾企業に対する税制の優遇措置や各種法的手続きの簡素化を約束した。台湾企業も中国進出にあたり、中国語が通じる相手との合弁事業は意思疎通の面でも問題なさそうだと判断した。やがて台湾の中小企業の企業家たちが福建省や広東省を中心に、中台合弁事業、次いで台湾の独資(全額投資)事業を次々に立ち上げた。

 だが、合弁企業が操業を開始してようやく利益を上げるようになると、状況は一変した。ある日突然、地元の警察がやって来て、脱税や各種違法行為などを口実に、台湾の企業家を逮捕・拘禁。そして合弁パートナーである中国企業に所有権を移すようサインを強要したのである。サインしなければ何か月でも勾留すると恫喝され、サインをすれば会社を失って国外退去にされるのだ。

 地方政府と公安警察、合弁パートナーである中国企業が結託しているために、対抗手段はなかった。都会では少なかったが、物価が安い地方都市や閉鎖的な農村部に進出した中小企業の経営者に、こうした災難に遭う人が多かったようだ。一説によると、当初の10年間に拘束された台湾の企業家は150人を下らないとも言われている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米軍、太平洋側で「麻薬船」攻撃 14人殺害=国防長

ビジネス

マイクロソフト、オープンAIの公益法人転換に合意 

ビジネス

米住宅価格指数、8月は前月比0.4%上昇=FHFA

ビジネス

米国株式市場・序盤=主要指数が最高値更新、アップル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持と認知症リスク低下の可能性、英研究
  • 4
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 5
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 6
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 7
    「何これ?...」家の天井から生えてきた「奇妙な塊」…
  • 8
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 9
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 10
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中