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中朝関係

北朝鮮テレビから削除された劉雲山――習主席の親書を切り裂いたに等しい

2016年1月12日(火)16時56分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国高官もばっさり 朝鮮労働党創建70年の記録映画から削られていた中国共産党ナンバー5の劉雲山(写真右端、昨年10月) KCNA-REUTERS

 1月9日、北朝鮮の国営テレビの画像から、それまでいた中国党内序列ナンバー5の劉雲山の姿が削除されていたことが分かった。「中国はどう反応するのか?」ということが注目されている。中国から見たこの意味を分析する。

習近平の親書を切り裂いたに等しい

 1月7日付の本コラム「北朝鮮核実験と中国のジレンマ――中国は事前に予感していた」で、2015年10月10日、中国共産党中央委員会(中共中央)政治局常務委員会委員(チャイナ・セブン)の党内序列ナンバー 5の劉雲山が北朝鮮を訪問したと書いた。このとき劉雲山は実は習近平国家主席の親書を携えていて、そこには核実験をしないようにという趣旨のことが書いてあったと、中国政府関係者から聞いている。

 謁見台でハグし、手を握って万歳の形に両手を高く掲げて喜びを表眼した金正恩(キム・ジョンウン)第一書記は、あの世界中が見ている画像の中から、スパッと劉雲山の姿を削除して、あたかも劉雲山はそこに存在していなかったような画像を、1月9日の北朝鮮国営テレビで報道させていたことが分かった。

 これは習近平国家主席が劉雲山に託した親書を切り裂いたに等しい。

 中国の怒りは、普通ではない。

 現時点では、中国はこの情報をいっさい報道しないという手段を選んでいるだけでなく、いつもは気軽に取材を受けてくれる中国政府関係者は、初めて「ノーコメント」と回答した。「私はそんな事実を知らない」というのだ。

 それくらい、中国にとっては「あってはならないこと」が発生したということができる。

 ここまでコケにされてもなお、中国は「唇なくば、歯寒し」と言っていられるだろうか?
(唇:北朝鮮、歯:中国)

中国ネット空間における民意

 中国政府系の香港メディアである鳳凰ウェブサイトは、昨年末の日韓外相会談以降、いくつかの質問をネットユーザーに投げかけ集計を取っている。新たな事象、たとえば北朝鮮の核実験などが発生すると、それに沿って新たな質問項目が増えている。

 その中に「北朝鮮はすでに中朝関係なんてどうでもいいと思っているのではないのか?」という質問がある。

 それに対して現時点における回答は96.22%が「北朝鮮は中朝関係などどうでもいいと思っている」と回答している。

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