最新記事

対テロ戦争

ISISへ経済封鎖、米国が投入する「新兵器」

米軍らの有志連合は、テロ組織の金融取引情報から攻撃先を特定

2015年11月26日(木)19時03分

11月24日、米軍機は先月来、シリア領内にある過激派組織「イスラム国」の石油関連施設を攻撃している。米軍の作戦担当者は、攻撃目標を見つけるための手掛りの一部として、従来とは異なる情報源を頼りにしているという(2015年 ロイター/Jonathan Ernst)

 米軍機は先月来、シリア領内にある過激派組織「イスラム国」の石油関連施設を攻撃している。イスラム国に対する経済的な締め付け強化の一環で、これにより同組織の石油ヤミ市場での収入は約3分の1減少したと米国は試算している。

 米軍の作戦担当者は、攻撃目標を見つけるための手掛りの一部として、従来とは異なる情報源を頼りにしている。それは銀行の取引記録にアクセスすることで、どの石油精製所・油井がイスラム国の資金源になっているかの把握が可能と、現旧当局者らは指摘する。

 その目的は、イスラム国が今も維持しているグローバル金融システムとのつながりを追跡することにより、同組織の資金源を断つことだ。

 この取り組みに詳しい筋によれば、イスラム国の資金の出入りを見極めれば、イスラム国のヤミ経済がどのように機能しているか、その一端を米国は垣間見ることができる。

 13日に発生したイスラム国によるパリ攻撃以前に開始され、その後さらに強化されている空爆においても、こうした情報が、目標決定の際に影響を及ぼしているという。イスラム国による公式の銀行取引は制限されているが、ある程度の利用は今でも可能であり、米軍及び金融監督当局はこれを逆用することができると、現旧当局者は述べている。

 「イスラム国を公式の金融システムからほぼ締め出すという点で、私たちは大きな成功を収めた」と、ジョージ・W・ブッシュ前大統領政権下の米財務省で情報担当副次官補を務めたマシュー・レビット氏は述べている。「完全に締め出したとは言えないのだが、それも実は悪いことではないかもしれない」

 この作戦がいつ始まったのか、また具体的にどの施設が結果的に破壊されたのかといった重要な側面については今回の取材では検証できなかった。2人の現当局者から作戦の概略については確認がとれたものの、詳細についてはコメントを取れなかった。

 米政府の「対テロ金融作戦」に取り組んでいる同国の情報機関、財務省、軍の当局者が、イスラム国に潤沢な資金をもたらしているシリア領内の石油関連施設の特定に際して、銀行の取引記録をどのように利用しているのか、また国内銀行が関与しているのかといった点は不明である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米控訴裁、中南米4カ国からの移民の保護取り消しを支

ワールド

アングル:米保守派カーク氏殺害の疑い ユタ州在住の

ワールド

米トランプ政権、子ども死亡25例を「新型コロナワク

ワールド

アングル:ロシア社会に迫る大量の帰還兵問題、政治不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    「AIで十分」事務職が減少...日本企業に人材採用抑制…
  • 9
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「火山が多い国」はどこ?
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 4
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中