最新記事
台湾

中台トップ会談は逆効果だった――国民党への支持率低下

2015年11月10日(火)18時44分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

「台湾は中国じゃない」 先週末、台北で初の中台トップ会談に反対する若者たち Pichi Chuang-REUTERS

 中台トップ会談後、国民党の支持率が下がり、野党民進党への支持率が上昇している。会談そのものが与えた視覚的インパクトと、北京政府寄りの国民党に対する支持率は別物で、総統選には逆効果だったことが判明した。

トップ会談そのものへの関心と国民党への支持は別物

 11月8日(12:41配信)の本コラム「中台トップ会談の結果――台湾国民は大陸を選ぶのか日米を選ぶのか?」では、11月7日夜に出た調査結果に基づいて分析したが、11月9日11:42に台湾で公表されたデーターと比較すれば、会談は逆効果であったことが明確になりつつある。

 11月7日夜の時点では、台湾のYahoo奇摩のネットアンケート結果しか出ていなかった。したがって筆者はそのデータと台湾からの直接の声をお伝えした。それによれば68%がトップ会談自身に興味を示し、肯定的だったのは事実だ。

 しかし、本コラムの読者で台湾の方たちから、「Yahoo奇摩は国民党寄りのウェブサイトだ」というご批判を頂いた。その傾向が若干あることは否定できない。

 客観的に台湾のウェブ検索市場を見てみると、「Google台湾が50.5%」で、「Yahoo奇摩が48.3%」、中国大陸の「Baiduが0.1%」だ。Googleが中国当局による検閲を嫌って中国大陸から撤退したのは、まだ記憶に新しい。それに比べてYahooは、そこそこに大陸当局と妥協しながら経営しているので、本コラムの台湾人読者が仰る通り、台湾Yahooが北京政府に対して「やや妥協的」であるという傾向にあるのは否めない。しかしイデオロギー的色彩が非常に鮮明であるかというと、そうとも思えない。

 Yahoo奇摩は2006年に「奇摩(kimo、キモ)ステーション」というウェブサイトをYahoo Taiwanが買収して誕生した検索ウェブサイトである。

 筆者が前回のコラムでご紹介したアンケート結果は、「中台トップ会談自身をどのように評価するか」に関するデータだった。あの握手の場面自身は、当然、世界の耳目を集めたことは事実だろう。だから68%という数値をはじき出したものと判断する。

 さらにYahoo奇摩の動きは素早かったので、7日の夜中に書いたコラムでは、そのデータを使用する以外になかったことをご理解いただきたい。

 しかし、あの握手により、台湾国民が国民党支持に傾いたかというと、これは全く逆で、国民党への支持率も、同党総統候補者に対する支持率も低下していることが判明した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

スペイン国防相搭乗機、GPS妨害受ける ロシア飛び

ワールド

米韓、有事の軍作戦統制権移譲巡り進展か 見解共有と

ワールド

中国、「途上国」の地位変更せず WTOの特別待遇放

ワールド

米、数カ月以内に東南アジア諸国と貿易協定締結へ=U
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
2025年9月30日号(9/24発売)

トヨタ、楽天、総合商社、虎屋......名門経営大学院が日本企業を重視する理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 2
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 3
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市場、売上を伸ばす老舗ブランドの戦略は?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    「汚い」「失礼すぎる」飛行機で昼寝から目覚めた女…
  • 6
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがた…
  • 7
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 8
    カーク暗殺をめぐる陰謀論...MAGA派の「内戦」を煽る…
  • 9
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 10
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 1
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 2
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 3
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがた…
  • 6
    【動画あり】トランプがチャールズ英国王の目の前で…
  • 7
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...…
  • 8
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 9
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 10
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中