最新記事

感染症

韓国MERS感染はなぜ1300名隔離まで拡大したか

中東以外で最大規模となった流行は、こうして引き起こされた

2015年6月4日(木)12時09分

6月3日、韓国で国家的パニックになりつつあるMERS。初の感染者となった男性は治療を求めて4カ所の医療機関を訪れたが、それが感染拡大の始まりだった。写真は仁川国際空港で2日撮影(2015年 ロイター/Kim Hong-Ji)

[ソウル 3日 ロイター] - 韓国で国家的パニックになりつつある中東呼吸器症候群(MERS)。同国初の感染者となった68歳の男性は、中東から戻った8日後にせきが出て発熱した。男性は治療を求めて4カ所の医療機関を訪れたが、それが感染拡大の始まりだった。

 朴槿恵大統領は3日、MERSコロナウイルスの感染が拡大していることについて、これ以上広がらないよう万全を期すべきだと強調した。韓国国内では感染者数が増え続けており、約1300人が隔離対象となっている。これまでに2人の死亡が確認された。

 MERSは、重症急性呼吸器症候群(SARS)と同様、コロナウイルスによって引き起こされる病気。2002年に世界的に大流行したSARSでは約800人が死亡したが、韓国ではMERS感染が当時の不安を呼び起こし、数百校の学校が閉鎖されている。

 同国当局者によると、中東以外で最大規模の感染を招く発端となった男性は、バーレーンで農機具を販売する会社を営んでおり、5月4日に帰国するまで中東に滞在していた。

 今回のMERS感染者の半数以上は、首都ソウルから南西65キロにある平沢市の病院が感染ルートであることが分かっている。男性はこの病院の大部屋に入院していた。

 韓国政府に助言する感染症専門家、Kim Woo-joo氏は「最初の患者は相部屋で他の患者の近くにいた。検査のために部屋から出て、くしゃみやせきをしながら院内を移動していたことで感染が拡大したと思われる」と語った。

 当局によれば、そのほかの感染者は、男性が訪れた4カ所の医療施設のうち、他の3カ所で感染した。当局は感染者が治療を受けている病院を特定していないが、平沢市の病院は閉鎖され、職員は隔離されている。

 自宅隔離中である同病院の看護師の1人は、男性の入院時、MERSに関する認識はなかったとし、「男性の来院で院内感染は避けられなかった」と電話でロイターに語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルのソマリランド国家承認、アフリカ・アラブ

ワールド

ミャンマーで総選挙投票開始、国軍系政党の勝利濃厚 

ワールド

米、中国の米企業制裁「強く反対」、台湾への圧力停止

ワールド

中国外相、タイ・カンボジア外相と会談へ 停戦合意を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 10
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中