最新記事

中東

焦点:金庫番失ったイスラム国、米軍の急襲で学んだ「教訓」

2015年5月20日(水)17時16分

米軍特殊部隊の急襲作戦から間もなくして、イスラム国はイラクの主要都市ラマディを制圧。イラク政府と同国を支援する西側諸国に大きな打撃を与えた。シリアでは、遺跡のある中部パルミラで攻勢を強めた。

イスラム国の関係筋は、同組織が指導的人物の死を容易に受け入れられるようになっていると語る。

中東出身のある戦闘員は「殉教者になるためにここにいる。われわれのカリフ(預言者ムハンマドの後継者)が殉教者になったとしても、イスラム国は崩壊しないだろう」と話した。

<自尊心に傷>

ロイターがシリア国内で接触したイスラム国の戦闘員たちは当初、米軍による急襲が起きたことに動揺していたようだった。

特にシリアでイスラム国は、外国のスパイ侵入の阻止に自信を見せていた。スパイと疑われる人物を捕まえた場合はしばしば公開処刑を行い、その様子を撮影したビデオを見せしめとしてインターネットで流している。また、メディアとの接触も管理され、ほとんどなかった。

戦闘員たちはこのような制限によって、組織が目立たず効果的に活動でき、奇襲をかけて敵を定期的に捕まえることが可能なのだと考えている。

当時、シリアのラッカにいたという戦闘員は、昨年夏に米国の人質救出作戦が失敗したのは、その情報を事前に入手しており、場所をひそかに移していたからだと話した。一方、今回の急襲作戦が成功したのは、スパイがいたからだと指摘。「すぐに見つかって罰せられるだろう。われわれはジハードの道を歩み続ける」と語った。

(Mariam Karouny記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2015トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア決算に注目、AI業界の試金石に=今週の

ビジネス

FRB、9月利下げ判断にさらなるデータ必要=セント

ワールド

米、シカゴへ州兵数千人9月動員も 国防総省が計画策

ワールド

ロシア・クルスク原発で一時火災、ウクライナ無人機攻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 3
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく 砂漠化する地域も 
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 6
    一体なぜ? 66年前に死んだ「兄の遺体」が南極大陸で…
  • 7
    『ジョン・ウィック』はただのアクション映画ではな…
  • 8
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    株価12倍の大勝利...「祖父の七光り」ではなかった、…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 7
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 8
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 9
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 10
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中