最新記事

アジア経済

中国主導のAIIB構想とアメリカの手痛い失策

アジア投資銀行加盟に踏み切る同盟国が続出、孤立するアメリカに残された選択肢とは

2015年3月26日(木)15時59分
シャノン・ティエジー

失策 アメリカはアジア諸国のインフラ整備に出資するAIIB構想から取り残された(写真はインドネシア) Beawiharta-Reuters

 中国が設立を主導する国際金融機関「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」への加盟をめぐる駆け引きが、一気に動き始めた。イギリスが今月半ばに参加を表明すると、せきを切ったようにドイツ、フランス、イタリアが続いた。創設加盟国入りの期限が今月末に迫るなか、不参加を表明していたオーストラリアや韓国を含め、加盟に踏み切る国はさらに増えそうだ。

 本来なら、これらのニュースはさほど注目度の高い話題ではない。だがアメリカがAIIBの設立に猛反発してきたせいで、AIIB構想への各国の対応は今や世界的な大ニュースだ。

 同盟国に不参加を呼び掛けてきたアメリカは、イギリスの加盟表明を中国への融和政策だと強く非難した。だが、イギリス批判はアメリカの無力さをかえって際立たせるだけだ。

 皮肉なことに、アメリカが警戒心をあらわにしたせいで、AIIBは米中の対立を象徴する存在となってしまった。アメリカは、AIIBが米主導の世界銀行やアジア開発銀行の存在意義を脅かす事態を恐れていた。だが同盟国に不参加を呼び掛けることで、アジアの一組織は国際的影響力を競う場に格上げされてしまった。しかもアメリカはその戦いに敗れつつある。

 AIIBを無条件で受け入れるべきだったという意味ではない。資金援助の決定に関して中国が特別な権限を持つのかという問題を含め、AIIBの統治体制に多くの懸念がある。AIIBの援助を振りかざして中国が周辺国に影響力を行使したり、同行の融資案件が環境や人権への配慮を欠く恐れもある。

同盟国を加盟させるべき

 それでも、AIIBが完全に中国の支配下に置かれる事態を回避するには、アジアにおけるアメリカの同盟国をAIIBに参加させるのが最善だろう。そのほうが、中国が権限を独占する場合よりもずっと厳格な統治体制を整備できるからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏のチャットボット、反ユダヤ主義的との苦情受

ワールド

ロイターネクスト:シンガポール、中国・米国・欧州と

ビジネス

日経平均は続伸、円安が支え 指数の方向感は乏しい

ビジネス

イオンが決算発表を31日に延期、イオンFSのベトナ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 7
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 8
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 9
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 8
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中