最新記事

社会

ロシアにはダメ男しかいない!

2014年12月26日(金)12時00分
アンナ・ネムツォーワ

男にはもう期待しない

 いずれにせよ、手っ取り早い解決策は見つかりそうもない。ロシア女性の約49%は独身だ。ざっと3000万人の独身女性をどう救えばいいのか。

「年下の男性に目を向けるよう助言している」と、モスカルコワ議員は言う。国民的人気を誇る65歳の歌手アーラ・プガチョーワがお手本になるというのだ。プガチョーワは20年前に18歳年下の歌手フィリップ・キルコーロフと結婚して人々を驚かせた。その後キルコーロフとは離婚。27歳年下のマクシム・ガルキンと結婚した。

 それにしても、あなたが若く美しく、スタイルがよく、芸術的センスもある女性で、周りには醜く強欲で傲慢な男たちしかいないとしたら、どんな気がするだろう。冒頭の母娘に話を戻そう。娘のエカテリーナはプロのバレエダンサーだ。母のエレーナとは違って、遠慮がちに小さな声で過去のトラウマを打ち明けてくれた。

 18歳の新人ダンサーだった頃、「シャンパンとキャビア」をごちそうするから自宅においでと、上司に声を掛けられた。当時の彼女の上司はモスクワ音楽劇場バレエ団の芸術監督だ。

 この手の誘いを断れば、キャリアはおしまいだと、先輩ダンサーたちが忠告してくれた。だがエカテリーナは断った。案の定、憧れの舞台でスポットを浴びるチャンスを失った。

 当時、エカテリーナは「恐ろしく嫉妬深い」男と同棲していた。その後、2人の関係は悪化。エカテリーナは彼のために「工夫を凝らして料理を作る」ことや彼のローンを肩代わりすることに疑問を持ち始めた。結局、その男とは別れ、母親の住む寝室2室のアパートに戻った。

 エカテリーナの話を聞いた後、モスクワの都心にリハーサルに行く彼女に付き合った。彼女の仲間のダンサーたちも、ほとんどが恋人募集中だ。

 ロッカールームでは、ロシアのダメ男の話で盛り上がった。彼女たちはもはや男性に幻想を抱いていない。結婚して温かい家庭をつくることは、若い女性たちの夢ではなくなりつつある。

「女はみんな結婚して子供を産むものとされてきたけど、そんな考えはもう通用しない」と、エカテリーナはため息をつく。

マルシアで惜しげもなくカネを使う女性たちも同感だろう。

[2014年12月 2日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米英欧など18カ国、ハマスに人質解放要求 ハマスは

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

米新規失業保険申請5000件減の20.7万件 予想

ビジネス

ECB、インフレ抑制以外の目標設定を 仏大統領 責
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中