最新記事

「イスラム国」

「身代金を支払えば訴追」、米政府が家族を恫喝

ISISの人質になったジャーナリストの両親に、米政府が伝えた非情な言葉

2014年9月26日(金)12時31分
ポーラ・メヒア

死を悼む フォーリーと家族に捧げられた祈りの言葉 Brian Snyder-Reuters

 息子を取り戻すための身代金を支払うなと、米政府から脅された──イスラム教スンニ派テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)に処刑されたジャーナリスト、ジェームス・フォーリーの母親が明らかにした。

 ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)の幹部から繰り返し、身代金を支払うのはテロを支援することを意味すると言われたという。「3回脅された。その言葉を聞いて、とても怖くなった。(身代金を支払えば)訴追すると言われた」と、母親のダイアンはABCテレビに述べている。

 ISISに身代金を支払えば、反テロ法違反で訴追するとして国務省高官から脅されたと、ジェームスの弟のマイケルも語っている。これらの脅しを受けて、フォーリー家はオンライン上での身代金のカンパを中止したという。

「同じように脅されている人質の家族のことが心配」だと、ダイアンは述べた。「(政府の脅しが)息子を取り戻すための私たちの活動の足を引っ張ったことは間違いない」

 一家の顧問によれば、フォーリーの処刑映像が公開される数日前にも、米政府の脅しを受けた。一家は先週、「ジェームス・W・フォーリー・レガシー基金」の設立を発表。人質に取られたアメリカ人の家族の支援と、紛争地帯で活動するアメリカ人ジャーナリストへの支援を行っていく。

 NSCの広報担当者はABCテレビに対し、テロ組織への金の支払いを禁じる法律があることをフォーリー家に知らせたことは認めたものの、訴追の可能性については言及していないと述べている(NSCはABCテレビに、一家を脅したとされる幹部の氏名を伏せるよう要請したと報じられている)。

 NSCの広報担当者は、ABCテレビにこうコメントした。「(ISISのような)政府の指定した組織や個人への身代金の支払いを、法律は明確に禁じている。また、人質犯に譲歩しないというのは、政府の長年の方針でもある。(身代金の要求に応じれば)さらに多くのアメリカ人が誘拐される危険が高まるだけだ。このような方針は公に示しているし、個人に対しても伝えている」

 こうしている今も、2人のアメリカ人ジャーナリストがISISに拘束されている。

[2014年9月23日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豪コアインフレ率、第3四半期0.9%なら予測「大外

ワールド

独IFO業況指数、10月は88.4へ上昇 予想上回

ワールド

ユーロ圏銀行融資、9月は企業・家計向けとも高い伸び

ワールド

ユーロ圏企業、事業見通し楽観 インフレ上振れリスク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水の支配」の日本で起こっていること
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 5
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下にな…
  • 6
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 7
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 8
    1700年続く発酵の知恵...秋バテに効く「あの飲み物」…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    【テイラー・スウィフト】薄着なのに...黒タンクトッ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中