最新記事

政治体制

世界で後退する民主主義

2014年6月17日(火)15時58分
ウィリアム・ドブソン(スレート誌政治・外交担当エディター)

勢いを増すポピュリズム

 民主主義の後退は統計にも表れている。人権擁護団体フリーダム・ハウスによると、世界の民主主義国はここ8年間減少の一途をたどっている。これほど長期にわたり政治的な自由が縮小するのは、過去40年以上で初めてのことだ。

 政治的な自由が確保されている民主主義国の数は、冷戦終結後で最低となっている。今や世界地図は独裁国家や半独裁国家、それに民主主義国に見せ掛けた抑圧国家だらけだ。最近のクーデターや政情不安は、こうしたトレンドに衰える気配がないことを表している。

 アメリカも民主主義の危機と無縁ではない。共和党と民主党の極端な対立は議会を機能不全に陥らせ、唯一の超大国であり経済大国であるアメリカを過去3年間に2度もデフォルト(債務不履行)寸前に追いやった。

 国民はそんな議会に失望している。CBSニュースの最近の世論調査によると、アメリカの登録済み有権者の43%が、民主党と共和党のどちらが議会多数派でも違いはないと考えている。また、連邦政府全般を信頼していると答えた人は17%しかいなかった(60年代は70%だった)。

 ヨーロッパの状況もさほど変わらない。政治不信が広がるに従い、選挙に出掛ける人が減っている。先月の欧州議会選挙の投票率は43・1%だった。

 最近のヨーロッパ7カ国の調査では、回答者の半分以上が「政府をまったく信頼」していないと回答した。イギリスでは有権者の60%以上が、政治家は「いつも」嘘をついていると考えている。

 人々は経済の先行きや失業の不安に怯えているが、政治家はそうした庶民の不安に無関心にみえる。だとすれば、ヨーロッパで危険なポピュリズム(大衆迎合主義)が勢いを増しているのも驚きではない。

 欧州議会選挙では、EU懐疑派(諸問題の原因を移民やイスラム教徒や欧州統合のせいにする傾向がある)がフランス、イギリス、デンマーク、ギリシャで勝利し、スウェーデンやドイツやハンガリーでも躍進した。

 フランスの極右政党である国民戦線のマリーヌ・ルペン党首は、同党が全国的な選挙で初めて首位となったのを受け、フランスの次期大統領選に出馬する意欲を示している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

IEA、石油備蓄4億バレル放出で合意 過去最大規模

ワールド

イラン、W杯「参加できない」 最高指導者殺害で=ス

ワールド

トランプ氏、イランの標的「ほぼ残らず」 戦闘近く終

ビジネス

米CPI、2月前年比+2.4%上昇 3月のインフレ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃に支持が広がるのか
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 5
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 6
    「邪悪な魔女」はアメリカの歴史そのもの...歌と魔法…
  • 7
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 8
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 9
    ホルムズ封鎖で中国動く、イランと直接協議へ
  • 10
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 5
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 6
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 7
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中