最新記事

東南アジア

外国人排斥に走るシンガポール国民の本音

フィリピン独立記念日のイベント開催にネット上で批判の嵐が巻き起こった訳は

2014年6月6日(金)12時47分
モン・パラティーノ

差別意識 シンガポール政府が昨年発表した、外国人労働者を増やす方針に反対する人々 Edgar Su-Reuters

 シンガポールで最近、不穏な動きが高まっている。事の発端は、シンガポール在住のフィリピン人たちが祖国の独立記念日の祝賀イベントを企画したこと。巨大ショッピングセンターが立ち並ぶオーチャード・ロードで6月8日に開催される予定だが、ネット上では一部の国民から「不適切で無礼だ」という怒りの声が上がっている。

 これは同国で外国人差別が強まっていることを示す証しだ。そして同時に、政府に対する不満の表れでもある。

 現在、シンガポールで働くフィリピン人労働者はおよそ18万人。フィリピンの独立記念日の祝賀イベントは何年も前から行われているが、今年は開催日が迫るにつれてソーシャルメディア上で激しい非難が巻き起こっている。彼らいわく、国の象徴とも言える目抜き通りのオーチャード・ロードで他国の独立記念日を祝うのは、国民のプライドを逆なでする行為。フィリピン国旗を掲げたりしようものなら「侵略」に等しいという。

 失業者を支援するサイト「transitioning.org」のギルバート・ゴーは、今回の祝賀イベントが「悪い前例」になるのを懸念している。「フィリピン人に認めればインド人や中国人、マレーシア人も同じことを企画しようとするかもしれない。そうなれば、いずれオーチャード・ロードは外国人が自国の旗を振り回すための場になってしまうのではないか」

 シンガポール政府は、フィリピン人の祝賀イベントをネット上で口汚く罵る声を厳しく非難している。「彼らの声は国や国民の考えを代表するものではない」と、タン・チュアンジン人材開発相は自らのフェイスブックに書き込んだ。「ああした偏狭な考えには断固ノーを突き付けるべきだ」

 リー・シェンロン首相も、反フィリピン人の動きを「シンガポールの恥」と断じた。「私たちは外国人居住者の数を管理する一方で、わが国に来る人々を寛大な精神で歓迎する姿勢を示さなければならない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、5万円達成で利益確定売り

ワールド

日米首脳きょう会談、対米投資など議論 高市氏「同盟

ビジネス

韓国GDP第3四半期速報、前期比+1.2%に加速 

ビジネス

バークシャー、KBWが「売り推奨」、バフェット氏退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下になっていた...「脳が壊れた」説に専門家の見解は?
  • 4
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 5
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 6
    中国のレアアース輸出規制の発動控え、大慌てになっ…
  • 7
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 8
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中