最新記事

中東

「シシ新大統領」は救世主になれるか

リークされた発言から読み解く改革への知られざる覚悟と真意

2014年5月26日(月)12時03分
トム・デール

熱い期待 支持者はシシが国に安定をもたらすと信じて疑わないが Mohamed Abd El Ghany-Reuters

 エジプトのアブデル・ファタハ・アル・シシ国防相は今年3月末、国防相など軍トップを辞任して次期大統領選に出馬することを表明した。シシは現代のエジプト政界で最も人気があり、世論調査の結果からすれば圧勝は確実とみられている。

 とはいうものの、シシはどんな大統領になるだろうか。演説では国民の結束を呼び掛け、庶民をたたえる言葉を並べ立てて大勢の崇拝者を獲得した。シシを崇拝する人々は、彼こそ過去3年間の激動の末に安定をもたらす待望の人物だと信じて疑わない。

 しかしシシには、演説しているときとは別の顔がある。昨年10〜12月、非公式の発言などを記録した動画や音声がYouTubeに投稿され、ムスリム同胞団(ムハンマド・モルシ前大統領の支持母体)やアルジャジーラと関係があるとされるニュースサイトで公開された。12年後半から公開直前までに記録されたものらしい(軍はコメントを拒否)。

 シシをエジプトの救世主と考えるエジプト人は、リークされた発言に驚くかもしれない。「民衆は私が優しい人間だと思っているが、それは違う。私は拷問であり苦痛だ」と、シシは語っている。

財政改革に問われる手腕

 リークされた発言からは、シシが過去6カ月の間、出馬表明をしなかった理由がよく分かる。出馬するには軍トップを辞任しなければならないことを承知していたからだ。

 10月初旬に公開された音声では、憲法改正案の策定中でシシの出馬を求める声がそれまで以上に高まっていたにもかかわらず、シシは次のように語っている。「世論に働き掛けて、シシ国防相が訴追されないよう憲法に免責条項を付加し、大統領の座に就けなかった場合でも国防相に復帰できるようにする」

 ホスニ・ムバラク元大統領とモルシという前任者2人が権力の座を追われたことを念頭に、退路を確保しておきたがっていたようだ。

 その後も訴追免責条項は付加されず、間もなく圧倒的人気が明らかになっても、シシは出馬表明どころか、支持者や報道陣に何カ月間も待つよう諭し続けた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、豪首相と来週会談の可能性 AUKUS巡

ワールド

イスラエル、ガザ市に地上侵攻 国防相「ガザは燃えて

ビジネス

カナダCPI、8月は前年比1.9%上昇 利下げの見

ビジネス

米企業在庫7月は0.2%増、前月から伸び横ばい 売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中