最新記事

新首相

どん底イタリアに奇跡を起こす男

2014年4月11日(金)12時04分
シルビア・マルチェッティ

新ルネサンスに向けて

 アメリカを軽視しているわけではない。レンツィは12年に米民主党全国大会(オバマが2期目の大統領候補に正式指名された)に出席したこともあるほど、アメリカの政治モデルを評価している。

 昨年、自らがイタリア民主党書記長選に出馬したときは、イタリア全土を車で回ってアメリカ流の選挙活動を展開。支持者から資金を集めた。

 イタリアが外交で手を焼く可能性がある相手はインドだ。レンツィは首相就任後早々に、インドに拘束されている2人のイタリア海兵隊員に激励の電話を入れている。

 2人は12年にインド沖で漁船を海賊船と間違えて銃撃し、インド人漁師2人を殺害した事件でインド当局に拘束され、起訴されている。レンツィは彼らが帰国できるよう首相として全力を尽くすと約束したが、インドとの間に生じたわだかまりは簡単には解けそうにない。

 国内にも敵はいる。お笑い芸人ベッペ・グリッロ率いる「五つ星運動」などの小政党は、レンツィが有力財界人を優遇していると批判。五つ星運動は、レンツィが連立内閣を組閣するときも協力を断った。

 レンツィは民主党の長老たちを「老害」として一掃するなど、党内にも不協和音を生んでいる。おかげでメディアに「壊し屋」と呼ばれている。

 だが、レンツィは歴代首相ができなかったことをやってみせると自信満々だ。その自信がどこから来るのかは誰にも分からない。イタリアに新しいルネサンスをもたらすには、奇跡が必要だという声もあるが。

 右腕のデルリオに言わせれば、思いどおりの改革を実現できるかどうかは決断力と、政権を長期間維持できるかどうかに懸かっている。「政治を取り巻く状況は変わった。レンツィが掲げる重点政策の内容と、現政権が上下院の任期満了(18年)まで続くべきだという点は誰もが同意している」

 その楽観論を裏付けるように、最近の世論調査では、回答者の56%が「レンツィ政権は長続きすると思う」と答えている。

 首相としてのレンツィの力量は未知数。だがイタリア再生という奇跡を起こすには、国民の期待と支持が大きな支えになるのは間違いない。

[2014年3月25日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ホンダ、日本と中国の工場で年末年始に稼働停止・減産

ワールド

インドネシア中銀、3会合連続金利据え置き ルピア支

ビジネス

英CPI、11月は前年比+3.2%に鈍化 3月以来

ワールド

中国訪日客、11月は3.0%増に伸び大幅鈍化 長官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中