最新記事

反対派

オーストラリア人の94%が反捕鯨の理由

2014年4月17日(木)16時43分
デボラ・ホジソン(シドニー)

 今やクジラは巨大なビジネスになっている。クジラ関連の観光収入は年間3億豪ドルにも上る。

 それだけではない。オーストラリア人の間で、クジラは国のシンボルと位置付けられるようになった。「私たちにとって神聖な生物だ」と、地元のジャーナリスト、アンドルー・ダービーは言う。「日本人にとってのツルのような存在と言えるかもしれない」

 オーストラリア人は南極海を自分たちの裏庭と見なしているので、この海域のクジラへの思い入れが一層強まっている面もあるようだ。世界には80種類以上のクジラがいて、それぞれ絶滅の危険度は違うが、オーストラリアにとってそれは問題でない。クジラはクジラなのだ。

 多くの日本人の目には、オーストラリア人の態度は二枚舌に映るだろう。何しろ、オーストラリアでは毎年、3万〜6万9000頭のカンガルーが射殺されたり撲殺されたりしている。

 頭数が増え過ぎているとの理由でそれが認められているのだが、生態系コンサルタントのレイモンド・ムジャドウェシュの調査によれば、カンガルーの頭数は大幅に減っているという。

「カンガルーを殺すのをやめるよう、日本がオーストラリアに圧力をかけるのは大歓迎だ」と、筋金入りの反捕鯨派でもあるムジャドウェシュは言う。「自分たちの二枚舌を棚上げしたまま、反捕鯨を主張し続けるわけにはいかない」

 いずれ、「野生動物の敵」という批判の矛先がオーストラリアに向けられる日が来るのかもしれない。

[2014年4月15日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スイス、米関税で近く猶予措置も 企業幹部のトランプ

ビジネス

景気動向一致指数9月は1.8ポイント上昇、3カ月ぶ

ビジネス

SUBARU、米関税で4━9月期純利益44%減 通

ワールド

米FBI長官、中国とフェンタニル問題など協議=関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 2
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 9
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 10
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中